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林總「かみくだいてご説明しますと……」(10月11日)

ダイエーはなぜ転落したのか?「利益重視・キャッシュフロー軽視」経営の罠

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ダイエーの店舗(「Wikipedia」より/Kirakirameister)
 ナポリからソレント、そしてアマルフィに向かうバスの車窓からは、世界遺産に登録された息をのむ絶景が続いている。イタリアに来て改めて思うのは、この国の多くの人々が過去からの遺産で糧を得ているということである。

 例えばアマルフィは、かつて交易で栄えた都市国家だった。その栄華のほどは町の中心に位置する大聖堂を訪ねれば一目瞭然である。9世紀から勢力を増し11世紀に頂点を極めたものの、13世紀後半にアラゴンに支配されて商売の権利が剥奪された。その結果一気に衰退し、商売の血液であるお金が回らなくなり、国家経営が立ち行かなくなったからである

 しかし近年では、イタリアだけでなく、世界中からセレブと観光客が集まる高級リゾートに変身した。再びお金が回りだしたのである。岸壁に建てられた古いホテルの数々は、多少の維持費はかかるものの、建物の償却はとっくに済んでいる。むろん初期投資の借入金の返済も不要であれば儲けも多いに違いない、とあれこれ考えていたとき、イオンによるダイエー完全子会社化のニュースを思い出した。

 1957年 4月、中内功氏によりダイエーの前身である大栄薬品工業株式会社が神戸市長田区に設立された。以来、ダイエーは価格破壊をキャッチフレーズに拡大を続け、90年代半ばに頂点を極めた。ところが、1998年に経常赤字に転落すると、その後は坂道を転がり落ちるように業績は悪化し、2013年にイオンの傘下に入った。そして、ついにダイエーの名は消えることとなった。

●債務レバレッジ


 なぜ破竹の勢いのダイエーが、あっという間に奈落の底に落ちてしまったのか。

 答えは、お金が回らなくなったからである。実は、規模を拡大していた時も利益は出ていたが、お金は回ってはいなかったのである。この矛盾した経営を可能にしたのは「債務レバレッジ」にほかならない。つまり銀行からの借金をテコに店舗を広げていったのである。時代の波に乗れば、新店舗は新たな売り上げと利益をもたらす。売り上げが増え利益が増えれば、銀行は金を貸す。

 ダイエーは借金と出店を繰り返して、ついに98年度の連結売上高約3兆円、連結経常損失約100億円に対して、連結有利子負債は約1.3兆円と膨らんだ。借金返済の源泉は利益だから、これでは会社は持たない。そして、銀行が手を引くと、大木が倒れるように経営が行き詰まった。キャッシュフローを考えず、利益だけを重視した結果だった。

 アマルフィ共和国は商売の自由を奪われてお金が回らなくなり、歴史から姿を消した。ダイエーもまたお金が回らなくなり、姿を消す。