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江川紹子の「事件ウオッチ」第15回

検察と証人が“司法取引”で証言を捏造?【美濃加茂市長収賄事件】崩壊する当局の主張

文=江川紹子/ジャーナリスト

 「中林とは年齢も近く、よく話をした」というA氏は、恐喝容疑で4月2日に逮捕され、中林社長と同じ愛知県警中村署に勾留されていた。4月23日頃に、容疑は不起訴となりいったん釈放されたが、覚せい剤取締法違反で再逮捕された。その少し後に、中林社長が困り果てた様子で、「検事から『人数が合わない』と言われている」とグチをこぼすのを聞いた、という。

 実は中林社長は、3月下旬に警察で贈賄事件の「自白」をした際、美濃加茂市内のガストで現金10万円を渡した時は、藤井市長と「2人きり」で会った、と述べていた。4月中旬から検事による取り調べが始まったが、4月25日には、捜査機関がガストの伝票を入手し、中林社長が藤井市長と同店で昼食を共にしたテーブルの客は、「3人」だったことが決定的になる。そのため中林社長は、X氏が同席している中で、X氏に気づかれずに現金を渡したと、供述を変更しなければならなくなった。

 弁護側は、取り調べの過程で、中林社長は検事からガストの伝票を突きつけられ、合理的な説明を求められた末に、供述を変遷させた、と見ている。

 それに対し中林社長は、ガストでの人数が3人だったことも含め、すべて自分で自発的に思い出し、検事による取り調べの最初から3人と供述した、と法廷で証言。弁護側の見立てをきっぱりと否定した。

 一方、Aさんの話を踏まえると、弁護側が主張するように、中林社長は検事から伝票を示されても、すぐにうまい説明ができず、留置場に戻ってついグチをこぼした、という状況が浮かんでくる。弁護側はA氏の陳述書を作成して裁判所に証拠請求し、中林証言の信用性に疑問があると主張している。

●検察への協力で詐欺事件の裁判が有利に?

 Aさんは、中林社長より早く、6月半ばに拘置所に移管となった。その後も、中林社長とは手紙で連絡を取り合っていた。中林社長からの手紙には、藤井市長の裁判での証言のために、連日のように朝から晩まで打ち合わせを重ね、検事との緊密な信頼関係を構築している様子が書かれている。

〈私の公判では、検察側は、一切難しい事や批判めいた事は言わないそうです。すんなり終わらせるそうです。逆に、藤井市長の公判での尋問は、相当な事を言われる様ですが、私の判決には影響ないとのことです。検事からは、「絶対に負けないから、一緒に頑張ろう!」と言われてます〉

 中林社長が美濃加茂市との契約を偽って金融機関から4000万円の融資をだまし取った件で、藤井市長の弁護団から告発された件について、〈かなりむかつきます〉と訴えながら、検察側の反応を次のように綴っている。

江川紹子/ジャーナリスト

江川紹子/ジャーナリスト

東京都出身。神奈川新聞社会部記者を経て、フリーランスに。著書に『魂の虜囚 オウム事件はなぜ起きたか』『人を助ける仕事』『勇気ってなんだろう』ほか。『「歴史認識」とは何か - 対立の構図を超えて』(著者・大沼保昭)では聞き手を務めている。クラシック音楽への造詣も深い。


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