NEW
永井孝尚『企業の現場で使えるビジネス戦略講座』(10月28日)

ルンバ成功のカギ、ニーズの断捨離とは?「すべての人に安く」から「5%に光るモノ」へ

【この記事のキーワード】

, ,

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 本連載第1回記事『なぜ日本メーカーはルンバをつくれない?「ニーズの断捨離」で新しい常識と顧客を創造』で、「ニーズの断捨離」の考え方についてご紹介した。


 簡単におさらいすると、多くの企業に浸透している考え方は、「すべての人へ、安く多機能を」という「水道哲学」だ。しかしモノが余っている現代、このアプローチでは顧客が「ぜひ欲しい」という商品やサービスは提供できない。だから価格勝負に陥ってしまう。そこでターゲット顧客と、その顧客の課題を徹底的に絞り込んで明確にし、その課題に対して的確な解決策を提供する、という考え方が必要になる。「5%の人へ、高くても光るモノを」と考え、こだわりの顧客に応える。これが「ニーズの断捨離」の考え方だが、次のような疑問が上がるかもしれない。

 「これは昔からある単なるニッチ戦略に過ぎないのではないか?」
 「この方法では、ビジネス規模が小さすぎるので、話にならない」

 こうした指摘は、半分当たっていて半分間違っている。確かにこのモデルは、昔からあるニッチ戦略の延長である。かつては、ニッチ戦略は数多くの選択肢の中の一つだった。しかし現代では、新規事業はニッチ戦略が出発点になった、ともいえるのだ。顧客のニーズは多様化しているため、きめ細かいニーズに応える必要がある。そのために、新規事業立ち上げで提供する商品やサービスはニッチにならざるを得ない。

 確かにiPhoneやアマゾン・ドットコムのように、ニッチではなく大規模なプラットホームとしての地位を獲得している商品やサービスもある。しかしiPhoneやアマゾンも当初からビジネス規模が大きかったわけではく、事業立ち上げ当初はニッチだったのだ。ニーズの断捨離を徹底してアーリーアダプター(初期採用者)を確保した上で、規模の勝負を仕掛けているのだ。それを理解するには、時間軸を含んだ視野を持ち、市場を他者とは異なる視点で捉え、発想を変えて市場に対応することが求められるのだ。

●5%の人に、高くてもこだわりの逸品を


 従来の「すべての人に、多機能を安く」という水道哲学思考では、顧客が20人いれば、最初から20人全員に売ろうと考える。しかし一方で、顧客からこのように言われることも多い。

 「悪くないんだけど、ほかにも同じような商品があるからね」

 あるいは、「想定している顧客は誰なのか?」と聞かれても、ターゲットの顧客を絞り込んでいないのでうまく答えられない。さらに、「では、顧客はなぜこの商品を買うのか?」と聞いても、答えに詰まってしまい、「いい商品だから買うはずだ」という回答しかできない。そして似たような商品やサービスも多いので、価格勝負に陥ってしまい、結果として売れない。

 これに対し、ニーズ断捨離思考は異なる。「5%の人に、高くてもこだわりの逸品を」と考える。具体的には顧客が20人いれば、そのうち19人は「まったく興味ない」と答える状態なのだ。しかし裏を返せば、1人だけ「少々高くても、絶対欲しい」という顧客がいればニーズの断捨離が成立する。そしてその顧客が誰なのか、その顧客の課題が何かをしっかりと把握するのだ。その上で、そのように特定された顧客に対して、より強くアピールするように課題を深掘りし、解決策を提供するのだ。