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永井孝尚『企業の現場で使えるビジネス戦略講座』(10月28日)

ルンバ成功のカギ、ニーズの断捨離とは?「すべての人に安く」から「5%に光るモノ」へ

文=永井孝尚/オフィス永井代表

 しかし当然ながら、20人中1人しか興味がない状態ではビジネス規模は小さい。

 そこで次に必要なのが市場開拓だ。20人のうち1人ではなく、半数近くが「ぜひ欲しい」というような市場を開発していくのだ。そのためには、顧客の課題をより深掘りし、解決策を広げていく必要がある。連載第1回記事で紹介したおそうじロボット「ルンバ」は、まさにそのようにして成功した商品なのだ。

 市場調査会社シードプランニングの調査によると、おそうじロボットの国内市場規模は、2010年に26万台だったが、18年には90万台になると予想されている。しかし、08年から10年にかけてこの市場は、なんと6倍に増えている。つまり08年はわずか4~5万台という極めて小さな市場規模だったのが、急速に拡大したのである。

 今やおそうじロボットの代名詞となったルンバは、誰もが製品写真を見ると「あ、これはルンバだね」と答えるようになった。しかし6年前の08年、ルンバの写真を見ても、ほとんどの人はそれが何かは答えられなかっただろう。知る人ぞ知る存在だったのだ。そして数少ない顧客の課題を深掘りして商品を強化し、市場を開拓して、ルンバは急成長しているのだ。

 間違えてはいけないのは、断捨離するのは「ニーズ」であって、「市場」ではない点だ。絞り込むべきは、「少々高くても、絶対欲しい」という顧客のニーズ。この顧客が誰か、どのようなニーズを持っているのかを見定め、解決策によって発掘し、大きな市場に育てるのである。

 そしてその出発点は、たとえ20人に1人であっても「ぜひ欲しい」という顧客を見つけだし、その顧客のことを徹底的に理解することから始まるのだ。

●日本市場で磨き、世界へ投入する、海外有力メーカー

 実はこのことに気がついている海外有力メーカーは、日本市場を重視している。例えばアイロボットのコリン・アングルCEOはインタビューで、「日本の顧客を幸せにできれば、世界中の顧客を幸せにすることができる」(4月1日付東洋経済オンライン記事)と語っている。日本市場で商品を磨き上げて、世界で勝負する方針だ。

 アイロボットのライバルとなる英ダイソンも、15年春に、世界に先駆けて日本でロボット掃除機を先行販売する。ダイソンが日本で先行発売するのもまた、消費者の目が厳しい市場で商品を磨き上げるためだ。日本の消費者のモニターを募集し、発売前に準備期間を設けて商品の最終調整をし、日本市場で磨いた商品で世界市場に挑む。

永井孝尚/ウォンツアンドバリュー株式会社代表

永井孝尚/ウォンツアンドバリュー株式会社代表

 マーケティング戦略アドバイザー。1984年に慶應義塾大学工学部を卒業後、日本IBMに入社。マーケティングマネージャーとして事業戦略策定と実施を担当、さらに人材育成責任者として人材育成戦略策定と実施を担当し、同社ソフトウェア事業の成長を支える。2013年に日本IBMを退社して独立。マーケティング思考を日本に根付かせることを目的に、ウォンツアンドバリュー株式会社を設立して代表取締役に就任。専門用語を使わずにわかりやすい言葉でマーケティングの本質を伝えることをモットーとし、幅広い企業や団体へ年間数十件の講演やワークショップ研修を実施。さらに書籍・雑誌の執筆、メディア出演などで、より多くの人たちにマーケティングの面白さを伝え続けている。主な著書に、シリーズ累計60万部を突破した『100円のコーラを1000円で売る方法』シリーズ(全3巻、コミック版全3巻、図解版、文庫版)、『そうだ、星を売ろう』、『戦略は「1杯のコーヒー」から学べ!』、『残業3時間を朝30分で片づける仕事術』(以上KADOKAWA)、『「戦略力」が身につく方法』(PHPビジネス新書)がある。最新著は『これ、いったいどうやったら売れるんですか? 身近な疑問からはじめるマーケティング』(SB新書)

・問い合わせ先:永井孝尚オフィシャルサイト

Twitter:@takahisanagai

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