日銀追加金融緩和は“画期的”経済再生策?デフレ脱却と企業の利益率向上を後押し?
そもそも、出口政策を考えなければならない時とはどのような時か? 金融緩和の行き過ぎでマネーがだぶつきインフレが高進するような状況、バブルの兆しが懸念されるような状況だろう。そのような状況では誰もが株を買おうと株式市場も過熱しているだろうから、日銀によるETF売却など問題なく吸収できる。むしろ過熱を抑える「冷やし玉」を握っているほうが、バブルの制御という意味では安心ではないか。
さらにもうひとつETF購入の利点がある。国債購入による量的緩和は、出口を考えるような状況では、アベノミクスが成功して金利は上昇しているはずである。そうなれば大量に買い込んだ国債に評価損が生じる。ところがETFの場合、アベノミクスが成功すれば株価は上昇しているはずだから、日銀は利益を得ることになる。資産購入による量的緩和でデフレ脱却と経済再生を狙うならば、国債よりもETFのほうが目的整合的である。
●企業の利益率向上にも寄与
ETF購入に関しては、もうひとつ特筆するべき点がある。それは今回から新東証株価指数であるJPX日経400に連動するETFも購入対象としたことである。今回の日銀の追加緩和は、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の資産構成見直しの発表と同じタイミングであったことから、それとの合わせ技なのではないか、との声もあるが、であればこそ政府の成長戦略=構造改革を後押しするものともいえるだろう。
今年6月、政府は改訂版成長戦略で企業の稼ぐ力を取り戻すと謳い、その目標に海外と同水準のROE(株主資本利益率:株主資本が企業の利益にどれだけつながったのかを示す指標)達成を掲げた。その意味で、ROEの高い企業から構成される指数であるJPX日経400連動のETF購入の意義は大きい。これでさらにJPX日経400への注目度が高まり、多くの企業がこの指数に入ることを目指すようになるだろう。その結果、日本企業のROEが改善されることが期待される。量的緩和をしながら企業の利益率改善も促すというのは画期的な策である。
これこそまさにQQE=量的質的緩和と呼ぶべきものだ。投資家もJPX日経400構成銘柄を買うだろう。そのため、現時点ではJPX日経400と東証株価指数(TOPIX)に目立ったパフォーマンスの差はついていないが、これから徐々に差がついてくることが予想される。
(文=広木隆/マネックス証券チーフ・ストラテジスト)