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関空・伊丹空港争奪戦が過熱 海外・日本企業連合の動き活発化、PFI拡大の試金石に

文=編集部
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関空・伊丹空港争奪戦が過熱 海外・日本企業連合の動き活発化、PFI拡大の試金石にの画像1関西国際空港(「Wikipedia」より/Carpkazu)
 新関西国際空港株式会社(新関空会社)は8月、関西国際空港と大阪(伊丹)空港の運営権売却(コンセッション)に向けた説明会を大阪府泉佐野市の関空内で開いた。国内では過去最大規模の運営権の争奪戦が、いよいよスタートした。売却期間は2016年1月からの45年間。最低予定価格は45年均等払いの場合は年490億円、計2兆2050億円となる。このスキームで、新関空会社が抱える1兆2000億円の負債を45年かけて完済する。

 今年10月に詳細な入札条件を盛り込んだ募集要綱を示し、入札を開始。2回の審査を経て、15年6月に1つの企業連合に優先交渉権を与える。同年9月に実施契約を締結、16年1月頃に運営権を移行し、企業連合により設立される新会社が2つの空港の運営を始める。

 説明会には国内外の150の企業・団体が参加した。国内勢は、みずほ銀行や三菱東京UFJ銀行、日本政策投資銀行、第一生命保険といった金融機関、三菱商事、前田建設工業、NTT都市開発など商社、建設、不動産の事業会社が顔を揃えた。海外からは英国、ドイツ、フランス、シンガポールなどの空港運営会社が参加し、関心の高さをうかがわせた。

成長戦略の目玉

 関空と伊丹の運営権売却は安倍晋三政権が成長戦略の1つと位置付けるPFI(民間資本を活用した社会資本整備)市場の活性化に沿ったもので、関空・伊丹が、その目玉である。外資の参加を制限するかどうかも焦点だった。安倍政権は民間資金を呼び込むPFI事業の規模を、今後10年で過去10年間の実績の3倍に当たる12兆円に拡大する計画だ。その切り札が欧米で普及しているコンセッションであり、関空と伊丹の運営権売却が最初の試金石となる。

 太田昭宏国交相は記者会見で「世界的に注目される大型案件。日本再興戦略の重要施策」と語り、外資を排除しない方針を示した。安倍政権が公共施設への民間資金活用を打ち出したことを受けて、海外の金融機関が色めき立った。これまでは経営難に陥った日本企業の再建スポンサーとなるケースが中心だったが、近年、投資案件が減少していた。インフラ・プロジェクトへの投資に、新たなビジネスチャンスを見いだそうとしているわけだ。

先行するマッコーリー・前田建設連合

 いち早く動いたのが、豪投資銀行マッコーリー・グループだ。13年10月、準大手ゼネコンの前田建設工業と大規模太陽光発電所(メガソーラー)の開発で提携した。両社は折半出資で前田マッコーリーを設立。新会社はメガソーラーや風力発電所などの企画・建設を手掛ける。数年間運営して実績をつくったうえで、機関投資家などに事業を売却する。前田マッコーリーの総事業費は1000億円を見込む。

 前田建設は中期経営計画で「脱請負」を掲げていたが、マッコーリーというパートナーを得たことで、本格的に脱請負へかじを切る。マッコーリーは再生可能エネルギー事業を入り口に、PFI事業への参入を図る。その第1弾が、マッコーリー・前田建設連合による関空・伊丹の運営権の獲得だ。

 マッコーリーは1969年に創業し、世界28カ国で空港、港湾、有料道路などの管理・運営の実績を持つ。管理資産は3960億ドル(39兆6000億円/14年3月31日時点)と世界最大だ。日本では神奈川県にある観光有料道路「トーヨータイヤターンパイク」(旧箱根ターンパイク)を手掛けている。07年には羽田空港のターミナルビルを運営する日本空港ビルデングの株式を買い占め、「外資による空港の乗っ取り」と騒がれた。一時は空港ビル株の19.91%の保有する筆頭株主になったが、空港ビル側の防衛策に阻まれ、09年7月に空港ビルの自社株買いに応じて保有株を手放した。

 一連の事態を受け、政府は成田国際空港株式会社に対する外資規制を法案化するなど、対応に追われた。空港は安全保障上も重要なインフラであり、関空の運営を外資に全面的に任せることについては政府内にも抵抗感があるため、マッコーリーには前田建設と組むことでその“外資アレルギー”をかわす狙いがある。

 コンセッションには多額の資金が必要となるため、入札に参加する企業は絞られ、最終的に参加するのは2、3の企業連合になるとみられている。欧米で名の知れたPFIの担い手であるマッコーリーは、前田建設と組んで参戦する。英ヒースロー空港やシンガポール国際空港の運営会社も、総合商社などと企業連合を組むことになる見通し。

 入札企業の懸念材料は、45年間にも及ぶ需要予測が不可能な点だ。官民でどうリスクを分担するのか。募集要綱がリスクを民間だけに押し付ける内容だと、応札企業が現れない可能性もある。

 数多くのプレイヤーの思惑が交錯する中、関空・伊丹の運営権争奪戦が熱を帯びてきた。
(文=編集部)

【続報】
 新関西国際空港会社は11月19日、関空と大阪国際(伊丹)空港の事業運営権の売却(コンセッション)について説明会を開いた。国内外の80社が参加し、新たに大和ハウス工業グループが地元の関西企業などと連携し、応札を検討していることが明らかになった。

 新関空会社は11月12日に詳細な入札条件を盛り込んだ募集要項を配布。要項を受け取った企業を対象に19日に説明会を開いたもの。住友商事や住友不動産、大林組、前田建設工業のほか、3メガバンクや日本生命保険、第一生命保険、野村証券など金融機関の担当者が参加した。

 三井不動産や東京急行電鉄グループ、住友商事が応札を検討していることが明らかになっており、この日の説明会で応札するであろう企業グループが出揃ったことになる。19日の説明会には南海電気鉄道や奈良県に本店のある地方銀行、南都銀行も参加した。

 大和ハウスのグループ内企業は商業施設を運営するノウハウを持っており、住商やオリックスなど関西となじみが深い企業と「関西企業連合」を組む可能性を、関係者は指摘している。不動産大手や総合商社を軸に、企業連合(コンソーシアム)作りが本格化する。

 応札するコンソーシアム(企業連合体)の中核企業の資格審査を、東京急行電鉄グループやオリックスなどが通過したことが11月28日に明らかになった。今後、通過企業が中心となり連合体づくりが本格化する。両空港を運営する新関西国際空港会社は、15年6月をメドに応札したコンソーシアムの中から落札企業を決める予定だ。三菱商事なども通過した模様。コンソーシアム代表企業と空港運営のノウハウを持つ、例えばシンガポールのチャンギ国際空港の運営会社など、外資系の空港運営会社がタッグを組み、ゼネコン、金融機関、関西の地元企業などを巻き込み、コンソーシアムが形成されることになる。15年2月16日に応札先を絞り込む第1次審査の応募が締め切られるため、資格審査を通過した企業はこの日までにコンソーシアムを組む必要がある。

BusinessJournal編集部

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