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雑誌不況、地獄の季節へ ビジネス誌部数激減、「スクープ」から「身の回り」の時代に

文=長田貴仁/神戸大学経済経営研究所リサーチフェロー、岡山商科大学教授
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雑誌不況、地獄の季節へ ビジネス誌部数激減、「スクープ」から「身の回り」の時代にの画像1「Thinkstock」より
雑誌不況は底が抜けて、地獄の季節に突入しました」と、あるビジネス誌の発行人は危機感を募らせる。

 1997年をピークに年々市場が縮小している出版業界において、比較的堅調といわれていたビジネス誌、経済・経営誌(以下、ビジネス誌)にも本格的な冬が訪れた。

 10月末のABCレポート(日本ABC協会)によると、「週刊東洋経済」(東洋経済新報社)の発行部数は6万部を割り5万9501部、「週刊ダイヤモンド」(ダイヤモンド社)も前年同期比マイナス9000部の8万4298部と激減。「日経ビジネス」(日経BP社)は、その倍以上に当たる2万1000部も部数を落とした。そのような中にあって、「プレジデント」(プレジデント社)は、前年同期比107.5%となり、再び18万部台に乗った。デジタル版との重複を除く紙媒体のみの紙版公査部数で比較をすると、同誌とビジネス誌首位「日経ビジネス」の差はわずか1900部になり、「指呼の間に入ってきた」(出版業界関係者)という。

 もっとも、東洋経済新報社のネット媒体である「東洋経済オンライン」は、7月1日付で新編集長が就任後3カ月、月間4000万PV(ページビュー:ウェブページ閲覧数)からおよそ倍になった。まさに同社は新事業で活路を見いだそうとしている。紙とデジタルをトータルでとらえれば、「東洋経済」はなかなか健闘しているともいえよう。対して、プレジデント社の「プレジデントオンライン」はPVもさほど多くなく、儲からない事業として紙媒体の付録的存在に留まっている。

 とはいえ、いずれも往時の姿はなく「どんぐりの背比べ」。「『プレジデント』を2000年2月に月刊から月2回刊にし、部数を大幅に増部させた」と当時のプレジデント社社長が社内外で公言していたが、それは部数が落ち込んだ最悪期をベースにしての「大幅増」。同誌は、「最も伸びた雑誌」として注目された1980年代後半がピークであり、当時は30万部の大台をめぐり、「日経ビジネス」と「プレジデント」がデッドヒートを繰り広げた。その結果、「プレジデント」が一時ビジネス誌首位の座を占めた。

●身の回りの話題で部数伸ばす「プレジデント」

「ビジネス誌」という媒体は、読者としてビジネスパーソンだけでなく経営者も想定してつくられているため、企業広報関係者もマークしている。社会に影響を与えるマスコミとしての存在だけでなく、企業経営、経営者の意思決定をも少なからず左右しているといえよう。とはいえ商業誌、「売れてなんぼ」という点では、他のジャンルの雑誌と変わらない。変わらないどころか、発行元出版社は主力ビジネス誌を屋台骨として全社戦略のブランドにしているという点では(毎日新聞社発行の「エコノミスト」を除く)、各社の経営、事業システムを揺るがしかねないほど、部数減は深刻な問題である。このような中にあって、各誌はネタを替え品を替え、いろいろな企画で勝負。「プレジデント」が、お金、仕事術、自己研鑚、人間関係、老後など、いわば身の回りの話題を特集にして部数を伸ばしている。

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