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江川紹子の「事件ウオッチ」第18回

【ろくでなし子さん再逮捕】不可解な要因は、警察のメンツと3Dプリンタへの警戒心?

文=江川紹子/ジャーナリスト
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●逮捕でろくでなし子さんを見せしめに!?

 しかし、こうした他の事例に比べても、ろくでなし子さんへ対応は厳しいように思う。彼女が展示したものは、女性器そのものの写真でもなく、リアルな再現でもない。仮に、ろくでなし子さんの石膏アートが展示されたのが、一般人が行き交う場所であれば、見たくない人の目に触れ、その性的羞恥心を害するとの認定もありえるだろうが、実際に展示がなされたのはアダルトショップなのである。

 にもかかわらず、彼女を執念深く罪に問おうとする捜査機関の意図はなんだろう。

 1つには、3Dプリンターという新技術に対する捜査機関の警戒心があるのではないか。3Dプリンターを巡っては、今年5月、神奈川県警がプリンターを使って拳銃を自作した元大学職員を逮捕する事件があった(この元大学職員は、懲役2年の実刑判決を受け、控訴中)。

 わいせつ事犯の取り締まりでも、3Dプリンター用データを頒布すれば、性器のレプリカなどの量産も可能であることを、警察は懸念しているのだろう。そのため、一罰百戒で早い段階で歯止めをかけようと、ろくでなし子さんがターゲットになったのではないか。

 もう1つ、警察のメンツもあるように思える。前回は、せっかく逮捕したのに、身柄拘束下での捜査が頓挫。その後、彼女は記者会見に応じたり、漫画を書いたりして警察をユーモラスに批判した。警察がわいせつ認定した“獲物”に逃げられ、逆に笑いものにされた、ということから、何が何でも……と意地になっている面もあるのではないか。

 前述のように、彼女の作品が刑事事件として取り締まりをしなければならない「わいせつ」に入るとは、私は思えない。しかし、捜査機関が、どうしても司法の判断を得て罪に問うべきと考えているのであれば、身柄拘束をせずに、任意で捜査を行うことは可能だ。証拠はすでに警察が押収済みである。前回も、彼女は作品を作ったことを否定はしておらず、そのわいせつ性を堂々と争っていた。今さら逃亡のおそれも考えにくい。なのに、何が何でも身柄拘束にこだわるのは、司法が判断をする前に、捜査期間が事実上処罰をすることで、見せしめにしようとしているように見える。

 警察や検察のいいなりになって、逮捕状を出したり、勾留状を出したりした裁判官も情けない。
(文=江川紹子/ジャーナリスト)

江川紹子/ジャーナリスト

江川紹子/ジャーナリスト

東京都出身。神奈川新聞社会部記者を経て、フリーランスに。著書に『魂の虜囚 オウム事件はなぜ起きたか』『人を助ける仕事』『勇気ってなんだろう』ほか。『「歴史認識」とは何か - 対立の構図を超えて』(著者・大沼保昭)では聞き手を務めている。クラシック音楽への造詣も深い。


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