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JMR生活総合研究所「消費と会社の戦略を読む」(12 月13日)

消費再増税延期、持続的消費回復につなげる条件とは 消費意欲底堅く、低価格離れ進む

文=松田久一/JMR生活総合研究所代表

 この消費の顕著な回復には目を見張るものがあり、500 兆円のGDPに対して、およそ10兆円の駆け込みがあったのではないかと推定される。GDP成長率寄与に換算すると約2%にも上るが、これは多くのエコノミストにとって予想外の消費回復であった。従って、多くのエコノミストは消費トレンドを上昇基調に修正した。このトレンド予測からすれば、4月の消費増税後は3カ月程度で回復すると見込んだ。そのため、4-6月期のGDP速報の落ち込みは予想通りだった。そして、7-9月期のGDP速報で消費回復が遅れ「ショック」と捉えられた(冒頭の「図表1 消費回復の過剰期待の修正―ショック」参照)。

 ショックと捉えられたのは、冷静な想定を裏切られたというよりも、「期待」を裏切られたという意味合いが強い。実際、株価下落はGDP速報値発表翌日の18日には回復した。予想外の消費回復で消費への過剰な期待が膨らみ、バブルのようにはじけた。エコノミストが利用している経済予測手法では、消費増税などの外的ショックと反動は経済モデルとして取り込みにくく、過去の延長推計で予測すれば、経済成長はプラス予想にならざるを得なかったということであろう。

 1世帯35万円の家計を200万社で奪い合い競争をしている消費の現場に近い企業やマーケターにとっては、機械的予測のショックという印象を拭いきれない。なぜなら、GDPの約60%を占める個人消費支出の指標となる家計調査では、9月以降も消費支出は減少していたからである。むしろ、前期比で0.2%の消費の伸びは予想外によかったといえる。
 

●消費の先行きの下振れ要因と上振れ要因

 消費は、短期的には振り子のように揺らいでいる。ただ、JMR生活総合研究所で10年あまり継続的に行ってきた調査結果をみると、消費者の支出意欲は足元で底堅い。消費の長期低迷の要因となっていた将来不安が、13年以降の景気回復を受けて大きく低下している。デフレ要因となっていた節約志向と低価格期待はゆるみ、緩やかなインフレ期待の下で、消費者の低価格離れが着実にみられる。

 消費の先行きの下振れ要因としては、駆け込み需要から回復する調整期間の長期化、円安に伴うコストプッシュ型の物価上昇が消費にもたらすマイナス・インパクト、インフレ下で収入が伸び悩むことによる実質収入の減少などが考えられる。そして、下振れを牽引するのは、低収入・低貯蓄の低所得層である。報道では、もっぱら下振れのほうが強調されている。

 一方で、上振れ要因として主なものを挙げると、金融緩和の下での円安進行や海外景気の回復などを契機に輸出企業の業績が回復すること、10月に発表された日本銀行の追加金融緩和による株高や地価上昇を通じた新たな資産効果、景気の再復調に伴う雇用環境の堅調さ持続などである。また、前述の通り将来の消費である貯蓄よりも現在の消費のほうが得という代替効果がある。若い世代には経験のないことであるが、持続的なインフレが続く経済では、駆け込み需要のような「今買わないと、値上がりしてから買うと損をする」という意識が強かった。そして、このような上振れを牽引するのは、高収入層や高資産層などの富裕層である。ちなみに、日本では金融資産を1億円以上所有する層は約100万人であり、人口の1%弱である。

松田久一

松田久一

JMR生活総合研究所代表

JMR生活総合研究所

 生活者の総合研究に基づいて、新しい事実を発見し、その事実から戦略を組み立て、経験を生かしたコンサルティングを通じて、クライアントの問題解決を行う。1991年に設立してから今日までの約20年の間に、年間平均250、延べ5000のテーマに取り組んできた実績を持つ。主たる領域は、食品、飲料・酒、化粧品・日用雑貨、輸送機器、家電・情報通信、流通など生活者と接点を持つ業界。日本を代表する企業のマーケティング課題のソリューション(解決)に取り組んでいる。

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