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タカタ、リコール問題を拡大させる異常な体質的欠陥 逃げ続ける経営トップ、米国の謀略説

文=編集部
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 公聴会を前にして、米メディアによるトヨタ・バッシングが相次いだが、公聴会翌日からそのバッシングは一斉に沈静化した。創業家の御曹司である豊田氏はそれまで、トヨタを引っ張っていくには若く、まだ経験不足と評価される向きが強かったが、公聴会出席を含めた一連のリコール対応で一気に評価を高めた。

 そんなトヨタと対照的な今回のタカタの対応だが、重久氏が表舞台に出てこない背景について、母・暁子氏の存在があるとの見方もある。暁子氏は重一郎氏と結婚後にタカタの前身である高田工場に入社。91年に取締役に就任し、07年からは特別顧問を務めている。現在は役員ではないが大株主で、公益財団法人タカタ財団理事長を務めている。タカタ関係者は「社内では誰も逆らえない女帝。重一郎氏が亡くなってからは、院政の状態になっている」と証言する。そのため、「暁子氏が重久氏に『表に出るな』と言っているのではないか。暁子氏が問題解決のカギを握っている」(別の同社関係者)との指摘も聞かれる。これまでも重久氏は、エアバッグに関する通常の取材も「安全設計に関わるので情報を出せない」との理由で受けないのが基本だ。

●さらに膨らむリコール対応費用

 リコール対応費用を積み増したためタカタは、15年3月期連結純損益が250億円の赤字(前期は111億円の黒字)に陥る。さらに米国では同社に対する集団訴訟も起きており、各自動車メーカーからは今後リコールにかかった費用の損害賠償を求められる可能性も高い。そうなれば数千億円規模の支出が発生するとの見方もある。タカタの14年9月末時点の純資産は1441億円。リコール費用が急増すれば、この程度の純資産はすぐに吹き飛んでしまう。

 にもかかわらずタカタの危機意識が薄い理由として、ホンダの存在が指摘されている。ホンダは最大の取引先であると同時に大株主であり、ホンダの伊東孝紳社長は、「誰も助けないのなら、ホンダが経営支援する」と語っている。「タカタがもはや自力で存続することはあり得ないだろう」と言い切る自動車業界関係者もいる。

 タカタは1995年に米国でシートベルトのリコール問題が起こった際に、自動車メーカーではなくタカタの名前が先行して報じられた苦い経験をしている。今回もNHTSAの指摘から火がついたことから、裏で政治的な意図が働いているとの見方もある。

 米国では今年3月から米GM車の欠陥問題がくすぶり続けている。そのため、GMから矛先をタカタに向けようという意図があったという説だ。このほかにも、米国はタカタを叩き日本の自動車メーカーを牽制することで、TPP交渉を有利に運ぼうとしているという見方だ。TPP交渉では自動車問題が大きな難関になっている。米国はTPP交渉で、米国の安全基準をそのまま日本でも採用するよう日本側に要求してくることが懸念されている。

 いずれにせよ、今回のリコール問題はタカタが1社だけで解決できるような規模ではなくなった。米国で高い授業料を払ったトヨタが12月2日、独立した第三者委員会を設立し、合同で原因調査を行うことを提案したのは、こうした大きな流れを察知したからだといわれている。第三者委員会にはホンダや日産自動車も加わり、オールジャパン体制で問題に取り組むことになる。
(文=編集部)

【続報】
 タカタの高田会長は12月17日、日本経済新聞の取材に応じた。

「欠陥エアバッグ問題で自動車メーカーが実施する調査リコール(回収・無償修理)について『全面的に協力する』と改めて表明した。ただ米当局が求めている一部エアバッグの欠陥認定と全米リコール実施については『現時点では応じられない』との姿勢を崩さなかった」(同紙より)

 高田氏は「リコールは完成車メーカーが実施するもので、各社の対応に全面的に協力する」と発言。従来の立場を堅持した。米運輸省・高速道路交通安全局(NHTSA)が求めている一部エアバッグの欠陥認定については「原因究明ができていない」とした。米国で批判されたことについては「私たちの思いが(世論に)うまく伝わらなかった」との認識を示した。「(NHTSAと)対立する意思はない」「すぐに過小資本に陥ることは危惧していない」との見通しを示しているが、米国で集団訴訟が拡大すれば大きな損失を受ける可能性も大きい。「今後も経営トップとして陣頭指揮を執る」としたが、これまでそれを怠ってきたため問題の火の手がこれだけ大きくなったとみられている。高田氏はきちんと記者会見を開いて語るべきであるし、米議会の公聴会にも高田氏自身が出て「欠陥認定には応じられない」理由を語るべきであろう。

●ステファン・ストッカー社長が辞任

 12月24日、ステファン・ストッカー社長が同日付で辞任し、代表権のない取締役に降格した。15年以降の処遇は未定だという。社長辞任は「ストッカー氏からの申し出があった」(タカタ広報部)というが、トカゲのしっぽ切りの感が強い。ストッカー氏は独自動車部品大手のボッシュの日本法人トップから13年6月にタカタの社長に就任した。社長は高田氏が兼務する。ストッカー氏はエアバッグ事件がこれだけ大きくなっても社長として記者会見することもなく、社長辞任にあたってのコメントすらない。社長辞任が決まった12月24日にも高田氏は記者会見を行わず、ストッカー氏の退任は夕方に突然、東京証券取引所の適時開示情報閲覧サービスにリリースを掲載しただけ。

 リコール費用の拡大に伴い業績が悪化する。そこで役員報酬の一部、返上を決めた。高田氏は月額報酬額の50%、ストッカー前社長は同30%、その他の取締役3人が同20%をそれぞれ4カ月間返上する。創業家以外から初めて社長になったストッカー氏が辞任しても、問題は山積したままだ。

BusinessJournal編集部

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