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脅かされる“異端児”りそな、減収地獄打破へ革命始動 混戦する業界の「切り札」に

文=福井晋/フリーライター
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 もう1つは「稼ぐ力」の低下だ。一般企業の売上高に当たり、銀行業界で稼ぐ力の指標となっている業務粗利益が、7期連続の減収に陥っているのだ。02年3月期、りそな銀行前身の旧あさひ銀行と旧大和銀行は合わせて7069億円の業務粗利益を計上していた。それが14年3月期は傘下の3行を合わせて5035億円と、12年間で実に28.8%も縮小していたのだ。

 公的資金返済優先の守りの経営に徹している間に、アグレッシブな営業力が衰えていたのが原因だ。このままでは「銀行の常識を変えよう」と行ってきた「5時まで営業」「365日・年中無休店舗開設」、さらには来年4月から実施予定の「365日・24時間振り込み」など、いくら新しいサービスを展開しても営業力の強化には結びつかず、減収に歯止めをかけられないとの危機感だ。

 同社関係者は「業務粗利益のV字回復を決意した東社長は、攻めの経営に転じなければ新しいサービスが生きないし、営業現場もアグレッシブになれないと判断した」と明かす。

 では東社長は、これからどんな攻めの経営を展開しようとしているのだろうか。

●成長戦略の武器はオムニチャネル

 りそなが1年ほど前に導入したシステムで、東社長がことあるごとに活用度合いを確かめるほど注力しているのは、複数の情報網を連携させる「オムニチャネル」だ。銀行が、なぜオムニチャネルを導入したのか。それは同社のビジネスモデルが関係している。

 03年に公的資金注入を受けて経営再建を開始したりそなは、元から強みにしていた個人と中小企業中心のリテール(小口業務)取引に活路を求めた。その結果、貸出金の約90%が中小企業向け融資と個人向け融資である住宅ローンになった。貸出金が小口分散しているため貸出リスクが減り、経営も安定した。リーマンショックが発生した09年3月期の最終損益は3メガバンクが揃って大幅赤字に転落する中、同社は1200億円の黒字を確保。経営の安定ぶりを証明した。

 リテール取引拡大と並行して、IT投資も積極的に進めた。リテール取引は貸出額が少ない割に、きめ細かい対応が求められる。業務粗利益が少ない小口貸出で利益を捻出するためには、IT化による業務合理化が不可欠だったからだ。

 リテール取引と銀行業務のIT化。このビジネスモデルが、同社をIT業界の動向に敏感な銀行にしていた。つまり、ITグローバルプレイヤーの金融事業参入に脅威を感じるのは当然だった。

 それを踏まえて昨年、同社は顧客情報データベースを刷新。約1万4000人の営業系社員の携帯情報端末、全国約600カ所の営業店パソコン、約230席のコールセンター、約2200台のATM、ネットバンキングなどを顧客情報データベースに結合、社員全員がリアルタイムでアクセスできる環境を整備した。

 これにより営業店、コールセンター、ATM、ネットバンキングなどのチャネル連携ができるオムニチャネルが稼働した。

 例えば、新規取引先を開拓する場合、チャネル連携によりグループ3行の「オールりそな」で取引先ニーズに合った金融商品を開発し、営業店の担当者がそれを提案できるようになった。また、チャネル連携により、的確な顧客情報分析も可能になった。この分析結果に基づき、取引先ニーズに合った取引接点確保、ビジネスマッチング、クロスセールスも可能になった。

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