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山田修「展望!ビジネス戦略」(12月25日)

キリン、暗黒の5年間 “果敢”経営のサントリーが逆転、組織改革失敗で意思決定遅延

文=山田修/経営コンサルタント、MBA経営代表取締役
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 12月22日、キリンホールディングス(HD)は社長交代を発表した。2015年3月末の株主総会で、三宅占二現社長が退任して代表権のない会長に退き、磯崎功典氏が新社長に就任する。磯崎氏は中間持ち株会社・キリンと事業会社キリンビールの社長を務めている。

 三宅氏が社長に就任したのは10年2月のこと。サントリーHDとの経営統合を進めていた加藤壹康(かずやす)社長が統合破談を受けて辞任したため、緊急登板だった。破談の最大の理由が、両者の持ち株比率だった。キリンHDは両社の事業規模などを根拠に当初キリンHD対サントリーHD=1対0.5を提案。その後の交渉で1対0.75までサントリーHD側の比率が引き上げられたが、結局合意に至らなかった。それから5年弱、両社の飲料業界における勢力図は大きく変わってしまった。

 三宅社長時代の5年間、それはキリンHDにとっては暗転の時代だった。直近の14年度中間期決算(1-6月)では売上高が前年同期比3.6%減の1兆562億円となり、サントリーHDの後塵を拝してしまった。純利益は実に76.5%減の140億円となった。サントリーHDの純利益は171億円で、通期でもキリンHDはサントリーHDを下回ると予想されている。

 サントリーHDの佐治信忠会長は果断な経営を展開してきた。中でも大きな意思決定としては、世界最大の蒸留酒メーカー、米ビーム社の買収と、ローソン会長だった新浪剛史氏の社長スカウトが挙げられる。いずれもオーナー経営者でなければ実現できない大胆な意思決定だった。

 そしてこれらの佐治氏の意思決定には、キリンHDとの統合破談がモメンタム(経営力学)として働いたのではないか。つまり、ビーム買収は「キリンHDより大きな規模になるためにM&Aを実現する」という意思、そして新浪氏の獲得は「大企業キリンHDの能吏型サラリーマン経営者とは対極にある個性派カリスマ経営者を後継に」という意思の表れだと受け止められる。

●屋上屋を架したキリン

 一方、キリンHD社長の三宅氏の大きなM&A案件としてはブラジル2位のビール大手スキンカリオールを2000億円で買収。しかし、その後1000億円の追加投資を行う事態になり、14年6月期は営業赤字のままだ。

山田修/経営コンサルタント、MBA経営代表取締役

山田修/経営コンサルタント、MBA経営代表取締役

経営コンサルタント、MBA経営代表取締役。20年以上にわたり外資4社及び日系2社で社長を歴任。業態・規模にかかわらず、不調業績をすべて回復させ「企業再生経営者」と評される。実践的な経営戦略の立案指導が専門。「戦略カードとシナリオ・ライティング」で各自が戦略を創る「経営者ブートキャンプ第12期」が10月より開講。1949年生まれ。学習院大学修士。米国サンダーバードMBA、元同校准教授・日本同窓会長。法政大学博士課程(経営学)。国際経営戦略研究学会員。著書に 『本当に使える戦略の立て方 5つのステップ』、『本当に使える経営戦略・使えない経営戦略』(共にぱる出版)、『あなたの会社は部長がつぶす!』(フォレスト出版)、『MBA社長の実践 社会人勉強心得帖』(プレジデント社)、『MBA社長の「ロジカル・マネジメント」-私の方法』(講談社)ほか多数。
有限会社MBA経営 公式サイト
山田修の戦略ブログ

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