イオン、楽天…自社経済圏への顧客囲い込み戦争 新決済サービス続出、クレカ終焉か
決済の一つの方式として、日本には「代金引換」という宅配業者が提供するサービスがある。インターネット通販の利用が増大し、また商品の受け渡しと代金の支払いが同時に行われることによる安全性の確保といった利点があるため、12年度にはヤマト運輸と佐川急便の2社で約2億件、2兆円規模に達している。
このように、各国の市場状況に合わせて特異な決済サービスが生まれるもので、中国ではeコマース最大手のアリババが、「アリペイ」という決済サービスを提供している。顧客が不正な業者にだまされたりしないように顧客から代金を一時的に預かり、商品が客に届いた時点で代金を販売業者に支払うことで、取引の安全性を確保するのに成功。これがアリババ急成長の要因の一つだとされる。
●IT企業が決済サービスに続々参入
非現金による決済サービスに注目が集まっている理由は、最近、グーグルやアップル、アマゾンといった著名IT関連企業がこの分野に進出してきているからだ。特に14年秋にアップルが日本の「おサイフケータイ」に似た「Apple Pay」という機能をiPhone 6やApple Watchに搭載したことで、決済サービスの話題に火がついた感がある。
そもそもIT企業が決済サービスを提供することで、どんなメリットがあるというのだろうか。
楽天やイオンのような小売業者が自ら決済サービスを提供する意図は理解できる。クレジットカードや他の決済手段を使われれば、手数料を払わなくてはいけない。特に、単価が低く粗利益率が数%しかないスーパーマーケットのような業種においては、買い物客が他社のカードを利用して、その手数料をカード会社に支払うことは利益に大きく影響する。そこで小売業者は金融サービスに進出し、願わくは銀行を抱え、お金とモノが自社グループ内で循環する環境をつくりたいと考えるのだ。「XX経済圏」と呼ばれるものである。
アリババも、オンラインファンドMMF「余額宝」を13年に始め、半年で4900万人から2500億元(約4.5兆円)の預金を集めるのに成功している。銀行の定期預金より2倍も高い約6%の金利を提供しているのが人気の理由だ。アリババのECサイトで買い物した客が、余額宝への預金を元にアリペイ決済を利用すれば、自社グループ内でお金とモノが循環する。すなわち「アリババ経済圏」がつくられたことになる。
楽天が自社カードを決済に使うのを促すためにポイントを提供するように、アリババもスマホで決済すればキャッシュバックをするなど、経済圏への消費者の囲い込みを積極的に行っている。スマホ決済が多い中国では、スマホにタクシー配車やレストラン予約等の便利なアプリを無料配布し、それらのサービスへの支払いにも自社決済機能を使ってもらうことをもくろんでいる。そのため、スマホで顧客を囲い込むかたちでアリババ経済圏をつくろうとしているといわれている。
●米国の決済サービス事情
日本では、銀行を傘下に収めている小売業者も多いが、米国ではそのビジネススタイルは難しいようだ。現に世界最大の小売業、ウォルマートは05年に銀行を買収しようとしたが、反対する銀行団体のロビー活動によって07年に断念している。