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ぼったくり大国・日本 粗悪な食材&高い料金の飲食店だらけ、今後も増加のワケ

文=城繁幸/人事コンサルタント
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 失われた20年における一つの勝ち組ビジネスモデルに「そこそこのサービスを安い値段で提供する」というスタイルがありました。日本マクドナルドが展開した「100円マック」や、一杯300円前後の牛丼が代表です。また、一人当たり3000円前後で楽しめる居酒屋チェーンなどもその一つです。こうしたビジネスモデルは、給料が頭打ちだったデフレ環境にもうまくマッチしました。結果、多くの個人経営の飲食店が淘汰されることにもなりました。

 しかし今、このモデルは限界を迎えています。安倍晋三首相がアベノミクスの名のもとに推し進めた円安誘導によって輸入物価は急上昇し、デフレ依存型のサービス業を直撃しました。さらに、活きの良い団塊ジュニア世代のフリーターであふれていた2000年前後より4割も新成人の減っている現在、時給数百円で身を粉にして働いてくれる店員を確保するのは至難の業です。昨今の東京都内の飲食店では、日中業務で時給1000円でもアルバイトを確保できないといわれています。

 要するに、環境変化によってデフレ依存型ビジネスモデルは破たんしたわけです。伝えられるマクドナルドやワタミの迷走の背景には、こうした事情があります。

 では、対策はどうすべきでしょうか。答えは、はっきりしています。それは「高い満足度を与えられるサービスを、それに見合った値段で提供する」ことです。具体的にいうと、物価と人件費の上昇でそれなりの値段はするが、それ以上の満足度を与えられる店になるのです。

 こうなると、毎朝自分で築地市場に仕入れに行って包丁一本で勝負するような個人経営の店のほうが強いわけです。逆に、現場に直接関与していない本部が商品企画や仕入れを全部仕切っている大手チェーン店が高付加価値を生み出すことは困難でしょう。このことは、高付加価値路線を打ち出しながらも、わずか一期で撤回に追い込まれたワタミが証明しています(参考:2014年12月24日付産経新聞記事『迷走するブラック批判「ワタミ」…価格引き上げから一転「値下げ」断行、後手後手の悪循環』)。

 では、デフレ依存型でも高付加価値路線でも勝負できない店はどこに向かうのでしょうか。それは「そこそこのサービスを、それに見合わない高い値段で提供する」ことです。そう、それは一言で言えば“ぼったくり”です。従来の価格と売り上げでは経営が成り立たないが、運営会社にも現場にも高付加価値を生み出すスキルもないとなれば、残る手段は強引に売り上げを伸ばす以外にありません。

 筆者と付き合いのある飲食店経営者いわく、風物語のような悪質業者は特に珍しいものではなく、一見客の多い都内ターミナル駅周辺には必ず数店舗は存在するとのことです。高付加価値化に対応できない店を中心に、これからどんどん増えるだろうとみています。

 筆者自身も、そうした店に入ったことがあります。その店はもともと「良心的な値段で、そこそこのサービスを提供してくれる」店でしたが、ある日突然お通しの値段が2倍になり、値段据え置きで串焼きの量と質が3段階くらい下がったのです。このような“合法的ぼったくり店”も含めて、これから日本中の内需産業において、ぼったくり化が着実に進行していくだろうというのが筆者の見方です。
(文=城繁幸/人事コンサルタント)

※本稿は、城繁幸氏のメルマガ「『サラリーマン・キャリアナビ』★出世と喧嘩の正しい作法」から抜粋・編集したコンテンツです。

【筆者プロフィール】

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●城 繁幸:人事コンサルティング「Joe’s Labo」代表取締役。1973年生まれ。東京大学法学部卒業後、富士通入社。2004年独立。人事制度、採用等の各種雇用問題において、「若者の視点」を取り入れたユニークな意見を各種メディアで発信中。代表作『若者はなぜ3年で辞めるのか?』『3年で辞めた若者はどこへ行ったのか-アウトサイダーの時代』『7割は課長にさえなれません 終身雇用の幻想』等。
ビジスパにて、メルマガ「『サラリーマン・キャリアナビ』★出世と喧嘩の正しい作法」を配信中。
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