空前の軽自動車ブームが映す日本経済の変貌 ステータスから実用性へ、普通車の必要性低下
このような背景があって、消費者は「ステータスとしての自動車」ではなく「実用品としての自動車」を選ぶようになったきた。
●理由3:ますます進む日本の高齢化
高齢化や核家族化が進んだことで、セダンやワゴン車など普通乗用車に乗る必要性が減ってきた。この結果、買い替え時に、より手軽な軽自動車を選択する高齢者層が増えてきた。地方では軽自動車に乗る高齢者が多い。地方で生まれ育った若者が成人すると、都市部に出てくる。地方と違い都市部に出てくれば、自動車を使う必然性は低い。高齢化だけでなく、若者の都市部への流出が進めば進むほど、自動車販売市場における軽自動車の割合は高くなっていく構造にあるのだ。
●理由4:進むデザイン面での改善
軽自動車のデザインが良くなったことも大きい。16年には日産自動車が軽自動車の自社生産に乗り出すことがすでに発表されており、従来のスズキ、ダイハツの2強に加えて、ホンダとともに市場を活性化させる役割を担うことになった。14年の人気は「2015年次 RJC カー オブ ザ イヤー」も受賞したスズキの「ハスラー」。それを追いかけるように、14年11月に発売されたダイハツの「ウェイク」の人気も上昇しているようだ。
また今年の年始から東京・青山にあるホンダ本社(1F)ショールームでメイン展示されているのが「N」だ。かつて軽自動車といえば、パッと見た目で「軽」とわかるものが多かった。軽自動車と普通車ではデザイン面でも中を覗いた時の広さという面でも、一目瞭然の違いがあったのだ。しかし、最近の軽自動車はかなり変わった。デザインは大きく改善され、カラーバリエーションも豊富になった。ナンバープレート(軽自動車は黄色)を見なければ、軽自動車であることがわからないくらい、デザイン性は普通自動車と変わらないくらい良くなった。
またハスラーやウェイクがCMで訴求しているように、室内も格段に広く使えるようになった。普通自動車との差異であったデザイン面と内装面において軽自動車は大きな改善を見せたのだ。これによって、今まで自動車購入の選択肢として軽自動車が入っていなかった消費者の選択肢にも入るようになってきたのだ。
●理由5:新興国市場の成長
軽自動車のリーディングカンパニーであるスズキは、世界がアジアに注目するはるか前、1982年からインド市場に進出した。30年以上前から地元に密着した活動が実を結び、インド市場におけるスズキはインド自動車市場トップである。