NEW

エリザベス女王杯を制した名馬ホクトベガとの悲劇が尾を引く横山典弘騎手“ブーイング”騎乗

【この記事のキーワード】

, ,

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
2015_premium02.jpg
JRA公式HPより

 関東を代表する名騎手として数々のGⅠレースを制してきた横山典弘騎手。その卓越した技術はライバル騎手たちも一目置くところだが、ここ数年は精彩を欠いている印象が強い。実際、一昨年は83勝、昨年は76勝と年々勝ち星を減らし、連帯率に至っては113勝をあげた12年の約3割1分に比べて、昨年は約2割2分と1割近くも落としている状況だ。

 そんな中でも、一部の競馬ファンから槍玉にあげられているのが、まるで勝つ気がないように馬群の最後方に位置し、最後の直線コースに近づいても位置取りを上げようとしない、いわゆる“後方ポツン”である。

「直線の長い東京コースならハマる時もあるけど、先行した方が断然有利な中山競馬場、しかも前が止まりにくいと言われる開幕週の馬場でも平然と後方ポツンをするんだから、ファンから怒号が飛ぶのも仕方がない」(美浦トラックマン)

 ほかにもスタートに失敗したり、勝負どころで不利を受けたりすると、勝負を捨てたような騎乗をすることも目立つ。直線で前が詰まった時もわずかなスペースしかない時は、無理に追わずに馬なりのままゴールする姿も珍しくない。

 各紙のトラックマンはレース後、検量室前で騎手のコメントを取るのだが、“後方ポツン”後の横山騎手は懇意の記者に「うまく書いといて」とだけ言い残し、済ましてしまうケースがほとんどだという。それにしても、なぜ横山騎手は“後方ポツン”をやるようになったのか? その理由を探ると、ある名馬との出会いがあるという。

 93年に、当時牝馬の3冠レースの最後の1冠となっていたGⅠ「エリザベス女王杯」を制したホクトベガ。当初は芝のクラシック路線を歩み、5歳時には「札幌日経オープン」、「札幌記念」と連勝するものの、獲得賞金に応じた斤量増もあり、他のレースでは良くて2着の善戦止まりが続いていた。だが、ダート路線に転向すると、破竹の快進撃。横山騎手を主戦に地方交流重賞を含め重賞を7連勝するなど、ダートでは無類の強さを見せて、その勝ちっぷりも圧巻だったことから「砂の女王」と賞賛された。

 古馬になりダートでは無敵の強さを誇ったホクトベガは97年、「第2回ドバイワールドカップ」に招待されて出走。このレースもって現役を引退し、レース後は渡欧させてヨーロッパの一流種牡馬との交配も計画されていた。ところが、横山騎手が騎乗したホクトベガは4角で転倒し、後続馬が巻き込まれる形で追突。左前腕節部複雑骨折により予後不良と診断され、安楽死処分となってしまった。

 そして、この一件が横山騎手の騎乗に劇的な変化をもたらす。

「ドバイ出走にオーナーサイドは当初前向きではなかったが、ノリ(=横山騎手)や調教師の『ドバイで勝負してみたい!』という熱い思いを受けて、ゴーサインを出したという背景もあった。しかも、レースではノリが手応えの悪いホクトベガを4角手前で強引に仕掛けたところで、転倒して故障してしまった」(前出の美浦トラックマン)

 倒れたホクトベガから横山騎手は馬場になすすべもなく放り出された。すると、最後方を追走していた馬が避けられず、あわや衝突。横山騎手は死を覚悟したが、その時にホクトベガが体を前に投げ出し、身を挺して後続馬との激突を守る形となったという。

 当時を多く語ろうとしない横山騎手だが、「ホクトベガ1頭だけじゃないけど、馬に命を助けてもらって、今こうしていられる。俺が強引な騎乗をしなければ、ああいうことにはならなかった」と話している。

「横山騎手が馬も騎手も無事であることを第一に考えるようになったのは、この時からと言われています。ドバイでは行く気がなかったホクトベガを強引に仕掛け、結果的に命を奪うキッカケになってしまった。それ以後、馬の行く気を尊重した乗り方が目立つようになり、走りたがらない、行く気を見せない馬は時として“後方ポツン”になる。あまり馬群を割ってこないのも、フェアプレーというよりも、まずは安全を第一に考えているからでしょう」(前出の美浦トラックマン)

なん とも悲劇的な出来事ではあるが、その一方で競馬は馬券を買うファンで成り立っているのも事実。成績が落ちている中、人気馬に乗りながら馬の気分一つで勝負を捨てるような騎乗スタイルが、ファンの間で物議を醸すのも仕方のないことだろう。となると、我々馬券で勝負する競馬ファンとしては、せめて“後方ポツン”のリスクを事前に察知したいところではある。前出のトラックマンはこう語る。

「しいていえば、横山騎手の返し馬を見ることかな。ここで走りが重苦しい馬は“ポツン”の危険性が高まる。ただ、トラックマンが陣取る競馬場の記者席でも“後方ポツン”に『ふざけるな!』と怒号が飛んでいるくらいだから、完璧に判別できる人間はいないけどね」とのこと。

 横山騎手の“後方ポツン”に対するブーイングを封じるほどの復活に期待したいが……。

(サイゾーpremium編集部)