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「不潔な」マクドナルド、客離れ加速 異物混入で世間は騒ぎすぎ?問題企業擁護論の間違い

文=垣田達哉/消費者問題研究所代表
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「不潔な」マクドナルド、客離れ加速 異物混入で世間は騒ぎすぎ?問題企業擁護論の間違いの画像11月7日、日本マクドナルドホールディングス記者会見の模様(撮影=山本宏樹)

 昨年12月以降、食品への異物混入が続々と発覚した。そのきっかけは、消費者が自らインターネット上に発信した、カップ焼きそば「ペヤング」(まるか食品)にゴキブリが丸ごと1匹入った写真だった。消費者が発信した例は過去にもあったが、2~3cm程度の大きなゴキブリが丸ごと麺の中に入り込んでいる写真は衝撃的だった。

 さらに今年に入り、日本マクドナルドの「チキンマックナゲット」に青いビニール片が混入している写真が公開され、これも消費者がネット上に発信したものだった。その後1週間ほどでマクドナルドの異物混入は20件以上が明らかになった。その中には、ハンバーグなどを焼く鉄板を清掃後に発生した鉄くずが2店舗で、鉄板清掃用の金属製スポンジの切れ端が1店舗で混入していたが、これらは明らかにマクドナルド側の責任で起きたものである。さらに、店舗で客から回収した異物を紛失するという、あまりにもルーズなケースも2店舗あった。

 これらはいずれも消費者側からの発信で、マクドナルド側から積極的に公表されたものは1件もなかった。マクドナルド以外での異物混入も次々に発覚したが、ほとんどが消費者側からの発信だった。中には、自ら演出した模倣犯がいたかもしれないが、マクドナルドの記者会見 (1月7日)でも明らかになったように、企業側が「発表するつもりはない」のであれば「それなら私が公表してやる」という消費者も多かったからだ。

覆い隠されていたものが表面化しただけの異物混入

 異物混入が立て続けに報道されたが、混入自体が最近特別増えたわけではない。今まで水面下に隠れていたものが、ペヤングの事件を契機に次々と表面化したにすぎない。国民生活センターや東京都などの地方自治体は、毎年異物混入件数や異物の内容などを公表しているが、マスコミがほとんど報道していなかったので、多くの消費者が知らなかっただけのことだ。

 テレビなどのマスコミは、できるだけ「企業の負の部分は報道したくない」という意識が強い。報道されないので、異物混入に対する消費者の関心が低くなり、マスコミ関係者も興味を示さなかった。そのため、消費者どころか記者などのマスコミ関係者の多くも異物混入の実態は知らなかった。それだけに、消費者以上にマスコミ関係者の衝撃度も大きかった。

「消費者やマスコミが騒ぎすぎる」という意見もあるが、消費者にもマスコミ関係者にも、異物混入の実態が明らかになってよかったのだ。1月前半のマスコミ報道は、異物混入の実態を知らせることで「異物に注意して食べましょう」という「消費者に注意喚起をするための啓蒙活動」にもなった。さらに、企業にとっても非常に価値ある情報提供になった。どんな業態で、どんな混入があるのか、消費者はどんな意識を持っているのか、その時の企業の対応はどうすべきかなど、他社の実情を知る意味でも大いに参考になったのである。

昔の消費者と商売をしているわけではない

 どんな問題や事件でも、必ず反対意見を述べる人がいる。今回の異物混入も「虫は食べても健康に害を与えないのに騒ぎすぎだ」「虫を食べることもあるから気にならない」「昔は虫なんて入っていたって問題にならなかった」などと、消費者を悪者扱いにし、異物混入をさせた企業を擁護するような発言も多かった。

 そんな発言を企業は真に受けてはいけない。1月11日に放送されたテレビ番組『真相報道バンキシャ!』(日本テレビ系)では、「食品への混入、許せる、許せない」という100人アンケートを紹介している。その結果は、危害を及ぼす可能性が高い金属は「許せる18人、許せない82人」だったが、健康影響が低いと思われる虫は「許せる11人、許せない89人」、さらに歯は「許せる3人、許せない97人」だった。金属より、虫や歯のほうが許せないという人が多かったのだ。

 理由は「不潔」である。昨年のマクドナルドの中国工場期限切れ食肉問題でも、あの映像を見た多くの人が「不潔」という印象を受けたことが、消費者のマクドナルド離れを招いた。「昔は日本でも落ちたものを拾っていた」と言われても、今の消費者には通用しない。不潔な企業の食品を食べる気がしないのが、今の消費者である。特に女性に、その傾向が強い。食は、女性に選ぶ権限がある場合が多いといわれる。その女性に嫌われたら終わりだ。食に関係する企業は「女性を敵に回すな」を肝に銘じるべきである。

「虫なんか平気で食べる」「入っていても取り除いて食べればよい」といった企業を擁護する発言には、企業は決して耳を貸してはいけない。「今の日本人はきれい好きというより潔癖症すぎる」と言っても、「金属より、虫や歯がいやだ」という消費者が多いのが現状である。「昔はよかった」「昔はこうだった」と過去の常識にとらわれている企業に先はない。

 企業は、昔の消費者と商売しているわけではない。好むと好まざるとにかかわらず、今の消費者に支持されなければ企業の発展はない。消費者感覚を理解していない企業が不祥事を起こす。社内外のゴマすり言葉には用心すべきである。
(文=垣田達哉/消費者問題研究所代表)

垣田達哉/消費者問題研究所代表、食品問題評論家

垣田達哉/消費者問題研究所代表、食品問題評論家

1953年岐阜市生まれ。77年慶應義塾大学商学部卒業。食品問題のプロフェッショナル。放射能汚染、中国食品、O157、鳥インフルエンザ問題などの食の安全や、食育、食品表示問題の第一人者として、テレビ、新聞、雑誌、講演などで活躍する。『ビートたけしのTVタックル』『世界一受けたい授業』『クローズアップ現代』など、テレビでもおなじみの食の安全の探求者。新刊『面白いほどよくわかる「食品表示」』(商業界)、『選ぶならこっち!』(WAVE出版)、『買ってはいけない4~7』(金曜日)など著書多数。

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