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2千人…アイドル大国・日本の破滅的競争 武道館公演、なぜ増加?景気回復で人気失速?

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左からさんみゅ~の山内遥、木下綾菜、西園みすず(撮影=名鹿祥史)
 さんみゅ~。2013年1月にデビューした7人組の女性アイドルグループである。かつて1980年代に松田聖子や早見優、岡田有希子を輩出したサンミュージックが実に21年ぶりにアイドル市場に送り出した精鋭たちだ。今年でちょうどデビュー3年目を迎えるのだが、彼女たちはデビューの1年前から約1000人に上る候補者の中から厳しい選抜を勝ち抜いてきた。また、もともとサンミュージックが各地に持つサンミュージックアカデミーの生徒であり、幼少の頃から演技などの修練を積んできている。例えば、さんみゅ~のセンターである木下綾菜は6歳から芸能活動を続けている。その意味では、かなりの素質があり、また長年の学習を積んできた、まさに「精鋭」たちなのだ。


 リーダーの西園みすずは、「デビューがゴールだと思っていた」と筆者のインタビューで語った。アイドル界では伝説ともいえる老舗の看板と営業力、そして彼女たち自身の力をもってすれば、確かに西園が言ったようにデビューすれば一定の成功が見込まれたかに思えた。しかし、デビューから先に待っていたのは、筆者の表現でいえば「さんみゅ~の戦い」そのものの苦難の連続だった。西園たちメンバーも、21世紀のアイドル市場で戦うことの困難を今は身をもって体験したという。

 今世紀、特にAKB48がブレイクし出したゼロ年代後半から今日までのアイドル市場は、まさに「アイドル戦国時代」の名前に恥じないものだ。いったいどれくらいのアイドルたちが日本で活動しているのだろうか? 「アイドル」の定義にもよるが、主要なアイドルだけでも、ざっと2000人を超える。

 これらのアイドルたちが似たような歌、ダンス、演技などの「アイドル財」を供給していれば、それは過当競争に至るだろう。過当競争になると、品質が似ているために、競う点が価格の引き下げに絞られてしまう。やがては価格の引き下げにコスト面で耐えきれず、破滅的競争に陥る。破滅的競争を避けるためには、個々のアイドルが個性の異なる「アイドル財」を提供するしかない。

 例えば、10年から11年にかけて、全国各地で疑似AKB48的なアイドルグループがいくつも誕生した。学園風のコスチュームと楽曲、ブログや動画の積極的活用、CD販売と特典(握手やチェキ)との抱き合わせ販売、なかには本家(?)と同じように専用劇場を有するグループも少なからずあった。しかし、いまやAKB48的な学園生活をコンセプトにしたアイドルグループは少数だろう。どのアイドルも必死で自分たちの個性を見いだそうとしている。

●ここまで酷評されたアイドル


 さんみゅ~の場合は、初期からそのコンセプトが明白だった。「明るく、元気に、爽やかに! 21世紀最初の純白アイドル!」というものがそうだ。それに合わせて彼女たちの衣装の基本カラーは白。黒髪でヘアカラーも統一されている。そして彼女たちの楽曲の多くは、80年代のアイドルソングを想起させるものが多い。デビュー曲が事務所の先輩に当たる岡田有希子の『くちびるNetwork』のカヴァーだったことも、懐古的イメージを増幅しているだろう。

 実際に筆者のさんみゅ~に対する当初のイメージは、80年代アイドルのリバイバルといったものだった。そしてほとんど関心の埒外であった。この先入観が崩れたのは、13年の夏に行われたあるイベントで、評論家の中森明夫氏のさんみゅ~評を聞いてからだ。まさに酷評だった。今から振り返ると、中森氏はさんみゅ~の生みの親である故・相澤秀禎の薫陶を若い頃から受けてきた人である。その背景をよく理解していれば、愛のある手厳しさではあった。だが、その中森氏の評価に、むしろ刺激を受けた。ここまで酷評されたアイドルを、逆に見てみたいと。