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ルディー和子「マーケティングの深層と真相」(2月16日)

アマゾン、無料配送はなくなるのか?小売業、アマゾンとの死闘で膨大なムダ排除&利益向上

文=ルディー和子/マーケティング評論家、立命館大学教授

●利益を圧迫する無料配送

 05年からプライム会員に無料で迅速な配送を始めたアマゾンは、毎年平均34%という驚異の売り上げ成長を続けていくが、営業利益率は04年の6%をピークにして、その後は下がり続け、11年には2%にまで落ち込んだ。小売業の利益率は米国でも低いが、それでもウォルマートは6%くらいを維持している。アマゾンの場合、売り上げ高の9%くらいだといわれる配送経費と物流センター構築への投資が負担になっているのだ。つまり、無料配送と迅速な配送は、売り上げ増には大きく寄与していても経費は確実にかかり、アマゾンの利益を圧迫しているわけだ。

 ファッション通信販売サイト、ZOZOTOWNを運営しているスタートトゥデイの前澤友作社長が「配送するにはそれだけ金がかかるのだ」と無料配送を支持する客を叱咤して炎上した事件があったが、怒る気持ちはよくわかる。アマゾンが無料サービスを提供しながら利益も伸ばしていればともかく、利益を出していない会社のまねなどしたくないと言いたくもなる。もっとも、アマゾン創立者のジェフ・ベソスCEOは、起業前にウォールストリートで働いていたため数字に強く、利益よりもキャッシュフローのほうが重要だと投資家たちに説いている。その言葉通り、アマゾンは営業利益が少なくても現金は常に潤沢に保有している。

 米国大規模小売業は、その後もリアル店舗の強みを生かすために、スマートフォン(スマホ)やタブレットといったモバイル端末の利用を進め、店舗の発信力を高めていった。これが第2段階だ。例えば、――日本の小売業でもやっていることだが――スマホにスーパーマーケットなどが提供しているアプリをダウンロードした客は、自分がいま現在いる場所から一番近い店舗に欲しい商品があるかどうか調べ、在庫を確認してからその店舗を訪れることができる。その際、事前に店内のレイアウトをチェックでき、該当商品がどこにあるか、棚の位置さえも調べることもできる。こういったサービスは消費者にとっては、それほど魅力あるものでもない。だが、次のようなサービスは大切だろう。

 例えば、目当ての商品を実際に手に取ってみたら色が気に入らなかった、あるいはサイズが合わなかった。そんなときには、店員がタブレット端末で、あるいは客が店内設置の端末で色違いやサイズ違いの在庫が他店舗にあるかどうかを調べ、場合によっては取り寄せてもらう、あるいは直接自宅に配送してもらうなどの選択ができる。

 こういったことを可能にするためには、在庫情報、つまりリアルタイムに更新される一元化された在庫データベースが存在しなくてはいけない。在庫データベースを構築した小売店は店舗のネットワーク化を進めることにより、アマゾンと少なくとも互角に戦えるプラットフォームを持つことになる。

ルディー和子/マーケティング評論家

ルディー和子/マーケティング評論家

早稲田大学商学学術院客員教授。
国際基督教大学卒業後、結婚・渡米を経て帰国、
米化粧品会社のエスティ ローダー社で働きながら
上智大学国際部大学院経営経済修士課程修了。
エスティ ローダー社ではマーケティングマネジャー、
出版社タイム・インク/タイムライフブックス社での
ダイレクトマーケティング本部長を経て、
マーケティング・コンサルタントとして独立、
自身の会社ウィトン・アクトンを設立
ルディー和子オフィシャルブログ

Twitter:@shouhigaku

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