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山崎元「耳の痛い話」

難しい“優秀な人材獲得”問題 リーズナブルに解雇できる仕組み必要 新卒一括採用は愚行

山崎元/楽天証券経済研究所客員研究員、マイベンチマーク代表
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 企業が有能な人材を確保する時期は、その人物がどこかに就職してからでもいい。ただし、この場合、企業は若い社員であっても、優秀な人材に対してとびきり魅力的な経済的条件を提示することが必要になるだろう。

新卒一括採用と日本企業の人事制度

 新卒一括採用は、年齢と年次に強くこだわる日本企業の人事制度と結びついている。しかし、年齢や経験年数で昇進や報酬を決めるという制度自体が、「人」に対してあまりに大雑把で人材を有効活用していないし、被用者側での納得性が乏しい。それこそ、前出の日経新聞がいうように今が「厳選採用」の時代なら、既存の社員に対する評価と報酬の設定も、もっと個別化して丁寧に行うべきだろう。

 新卒採用も中途採用も、採用活動を活発に行うには、すでに採用した人材をリーズナブルなコストで解雇できる仕組みが必要だ。解雇に関する規制緩和が進むと、それに対応して採用に関する柔軟性がより拡大するだろう。採用時期が画一的で失敗の許されない「厳選採用」を行うなら、採用は大学名などの外形的データに大きく左右される形式的なものになり、採用担当者にとってより無難なものになるだろうし、採用数に関しても抑制的にならざるを得ない。

 また、中途採用あるいは解雇の流動性を高めるためには、解雇に関する金銭補償ルールの確立のような措置だけでなく、例えば退職金や企業年金における長期勤続の優遇措置のような人材流動性を低下させる措置を抑制する必要がある。そのためには、退職金に関する税制優遇を縮小又は廃止すべきだし、企業年金における制度設計のルールの変更が必要だろう。

 新卒一括採用を変更するとなると、会社内外の制度や人事マネジメントの方法まで変化が必要になるが、それは優秀な人材を確保し、さらに人材を有効に活用しようとする企業にとって好ましい変化だろう。

 もっとも、ここで述べたような変化には、国の制度が変わらなければ十分に対応しきれない面もあるが、問題意識を持てば個々の企業単位でさっさと変えられるものが多い。率直にいって、日本企業は人材のリクルーティングにもっと力を入れるべきだ。人材採用は、人事部に任せきりでいいレベルの仕事ではない。

●就職活動の多様化・柔軟化によるメリット

 なお、現在の日本の就職事情に関しては、評論家でコラムニストの常見陽平氏の近著『「就活」と日本社会』(NHKブックス)に詳しい。常見氏が指摘するように、日本企業がすべて新卒一括採用だけを行っているわけではなく、既卒者にも門戸を開く会社もあり、採用形態は多様化している。日本企業の採用は、決して「新卒一括採用」の一言で決めつけられるものではない。

山崎元/楽天証券経済研究所客員研究員、マイベンチマーク代表

山崎元/楽天証券経済研究所客員研究員、マイベンチマーク代表

経済評論家。楽天証券経済研究所客員研究員。(株)マイベンチマーク代表取締役。1958年北海道生。1981年東京大学経済学部卒業、三菱商事に入社後金融関係の会社に12回の転職を経て現職。資産運用を中心に経済一般に広く発言。将棋、囲碁、競馬、シングルモルト・ウィスキーなどに興味
評論家・山崎元の「王様の耳はロバの耳!」

Twitter:@yamagen_jp

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