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河合塾、講師不当雇い止めで労働争議 法人側の曖昧な回答に傍聴席から失笑

文=関口威人/ジャーナリスト
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河合塾、講師不当雇い止めで労働争議 法人側の曖昧な回答に傍聴席から失笑の画像1河合塾の校舎
 大手予備校の学校法人・河合塾(本部・名古屋市)のベテラン講師が不当に「雇い止め」されたとして、愛知県労働委員会に申し立てた労働争議の審問が続いている。河合塾側は雇い止めした理由のひとつに、講師が雇用問題に関するチラシを複数の職員に配布したことを挙げる。講師は「生徒のいない休憩中、現場のリーダーにきちんと説明した上で渡し、問題はない」と主張するが、河合塾側は「施設管理者に無許可で強引に配布した」と反論する。ただ、過去に無許可でも劇団公演などのチラシ配布は認められたことがあるといい、証人として出席した河合塾法務部長自ら「何がよくて何がだめか、基準はない」と証言。1枚のチラシをめぐる曖昧な基準で講師のクビが切られる実態が明らかになった。

●「無許可でビラ」と厳重注意から雇い止めへ

 申し立て側の労働組合「河合塾ユニオン」書記長で、河合塾の理数系講師として25年近くの実績がある佐々木信吾さんは憤慨する。

 2013年8月、佐々木さんは厚生労働省が作成した「労働契約法改正のポイント」というリーフレットを、当時授業を持っていた東京・町田校と神奈川・横浜校で職員に配布しようとした。労働契約法改正によって、有期契約が通算5年を超えると無期契約に転換できるなど、労働者側が有利になるようなルールが定められたが、河合塾では逆に「法改正によって解雇されるかもしれない」と心配する職員の声が組合に寄せられるようになっていたからだ。

 佐々木さんは組合書記長らと相談し、「周囲に生徒がいない状況下で、袋に入れて手渡しする」「業務中や、業務に差し障ると思われるとき、忙しそうにしているときには渡さない」「その場の責任者に、厚労省のリーフレットであることを示し、現物を手渡す」などに注意して配布することにした。

 町田校では昼休みから午後の時間帯にかけ、その時間の責任者である「チーフ」に断った上で女性の専門職員2人にリーフレット入りの茶封筒を手渡し、横浜校では夕方、男性チーフに配布の趣旨などを説明した上で、休憩中とみられた知り合いの専門職のひとりに数部を預けて立ち去った。その際、両チーフには「(施設管理者である)校舎長と連絡が取れない」「校舎長の判断になる」などと言われたが、「止められたり、注意されたりすることはなかった」「気まずさなどはなかった」と佐々木さんは証言する。

 ところがその約2週間後、佐々木さんはこの行為が「無許可で不特定多数にビラを配布した」ことに当たるとして河合塾側から書面で厳重注意を受けた。さらに約3カ月後の同年11月22日付で、翌年度の業務委託契約を締結しない方針が書面で通知された。その理由の第一にリーフレットの配布行為が挙げられ、「厳重注意にも非を認めていない」「塾の信頼を裏切る」ことだと強く非難されたのだ。佐々木さんは弁明の機会もなく、翌年度からの講義を外されたとして、組合を通じて不当労働行為を訴えた。

●「決まった要件はない」

 先月、審問に証人として出席した河合塾の清水雅利法務部長は、両チーフらへの聞き取りを基に、佐々木さんの行為を「校舎長に無許可でチラシを配布した」「チーフがやめてくれと制止するのを拒絶して強引に渡した」とあらためて批判。佐々木さん本人から事情を聴取しなかったことについては「無許可で配布した事実は(チーフらからの聴取で)確認できた。それで十分」と主張した。

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