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水野誠「マーケティングの進化学」

「ガラケー対スマホ」は間違い?マーケティングの市場細分化で陥る罠

文=水野誠/明治大学商学部教授
「ガラケー対スマホ」は間違い?マーケティングの市場細分化で陥る罠の画像1「Thinkstock」より

 筆者は約30年前に広告会社へ就職し、約10年前から大学でマーケティングを教えてきましたが、マーケティングの正統的な枠組みについてずっと感じている疑問、あるいは違和感があります。筆者は昨年、拙著『マーケティングは進化する クリエイティブなMarket+ingの発想』(同文舘出版)を上梓しましたが、同書はマーケティングの「変な」教科書を目指すと宣言しています。「変」というのは、教科書としてオーソドックスな枠組みを踏まえながらも、疑問や違和感に触れたり、必ずしもオーソライズされていない新しい考え方を紹介したりするということです。

 しかし、二兎を追ったせいで一貫した強いメッセージを打ち出すことができなかったかもしれません。そこで本連載では、同書で伝えたかったことをより明確に、より大胆に語っていきたいと思います。

 最初に取り上げたいのが、マーケティングの基本中の基本といわれる、セグメンテーション(S)、ターゲティング(T)、ポジショニング(P)、略して「STP」という発想です。どんなマーケティングの教科書や授業でも、これについて触れていないものはまずないと思います。そして、多くの現場マーケターが書く企画書にも、この3文字は必ずといっていいほど登場します。ところが、実際にSTPについて学生に教え、現実の例に適用する演習をしてもらうと、そう簡単には理解できないことがわかってきます。

●セグメンテーションへの誤解

 まずセグメンテーション。市場細分化と訳されることもありますから、市場を細かく分けることだと考えられます。とすれば、携帯電話市場であれば、従来型携帯電話(フィーチャーホン、ガラケー)とスマートフォン(スマホ)に分け、後者をさらにiOSとAndroid、WindowsといったOSで分けていけばいいのでしょうか? これは、製品分類としては正しいですが、セグメンテーション=市場細分化としては正しくありません。

 まずいえることは、セグメンテーションとは顧客(まだ購入していないが将来購入する可能性がある潜在顧客を含む)を分類することであり、製品分類とは違います。顧客を分類するのですから、日常的にどんな通信手段を求めている顧客なのか、どのブランドが好きか、購買力はどれくらいか、といった顧客側の要因で顧客を分けるのが定石です。そして、そうして分けられたセグメントのどこを重点的に狙うのかを決めることが、ターゲティングといわれるものです。

 なぜ製品ではなく顧客に注目するのでしょうか。それは、企業に真に利益をもたらすものは顧客であり、顧客が最も重要であるという発想がマーケティングの基礎にあるからです。極論すれば、売るものが何であれ、顧客さえいれば企業は利益を上げられる、ということになります(これは客観的真理というより、1つのものの見方にすぎないことは、今後この連載でも議論してきたいと思います)。

 もちろん、「ガラケーを使いたがっている顧客」「iPhoneを買い続けている顧客」というように分類すれば、製品で分けても顧客で分けても同じことのように思えます。すると、製品ではなく顧客を分けるのがセグメンテーションだと主張しても、単なることばの遊びのように聞こえるかもしれません。しかし、製品を分けるのか、顧客を分けるのかの違いは、実はかなり根が深いというのが筆者の考えです。

水野誠/明治大学商学部教授

水野誠/明治大学商学部教授

明治大学商学部教授
、博士(経済学)東京大学。1980年筑波大学第一学群社会学類卒業。1985年筑波大学大学院経営・政策科学研究科修士課程修了。2000年東京大学大学院経済学研究科企業・市場専攻博士課程単位取得満期退学。株式会社博報堂(マーケティング局・研究開発局、1980~2003年)における勤務、筑波大学社会工学系専任講師、同大学大学院システム情報工学研究科専任講師、准教授(2003~2008年)、明治大学商学部准教授(2008~2014年)を経て現職

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