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ルディー和子「マーケティングの深層と真相」(3月14日)

スカイマーク破綻を招いた下手なモノマネ&広報、LCCで唯一ピーチ好調の戦略的理由

文=ルディー和子/マーケティング評論家、立命館大学教授

 そもそも、日本の大手空港のインフラ条件はLCCが利益を出して飛べるような内容にはなっていない。発着枠などの運航条件の制約もあり、着陸料や使用料も中国や韓国に比べると3倍ほど高い。もちろん、成田をはじめ国内の他空港も、海外の空港との競争を視野に制約や料金を変更する傾向にはあるが、そのスピードは遅い。ちなみに、1座席1キロメートル当たりのコストを見ると、エアアジアが3円台、国内LCCは8円台、国内大手航空会社は10~11円だとされる。

 このような日本の航空産業の制約は、日本のLCCがサウスウエスト航空のマネをしきれない大きな理由のひとつとなっている。

サービスの簡素化に失敗したスカイマーク

 そしてもうひとつの要因は、顧客サービスの簡素化に関係することだ。特に、スカイマークの例がわかりやすい。

 スカイマークは12年に消費者への苦情対策について、消費者庁から改善勧告を受けている。機内で配布していた文書「スカイマーク・サービスコンセプト」には、スカイマークの機内サービス方針が8項目記されていた。例えば、「機内での苦情は一切受けつけません。不満がある場合は、お客様相談センターあるいは消費生活センター等に直接ご連絡ください」と書いてあった。苦情を公的機関に押しつける姿勢は容認できないとして、消費者庁は文書回収を指示した。その一方、この文書の書き方が傲慢だと世間一般からも批判された。例えば、「荷物の収納の援助を行いません」「幼児の泣き声に関する苦情は一切受け付けません」といった項目に関し、LCCでは手厚いサービスがないのは仕方ないとしても、文章の書き方が断定的で上から目線だとの指摘が相次いだ。

 この出来事に関する報道では、「たとえ格安航空でも、日本の消費者には日本流の丁寧なサービスが必要なのではないか」「海外では格安と引き換えの不便さを利用者はある程度理解して利用しているが、大手の高いサービス水準に慣れた日本の利用者には戸惑いがある」という論調が目立った。つまり、「価格」と「サービス」の両立を日本の消費者は求めているという意見だ。これは、正しい意見だろうか?

 筆者は、このメディアの論調は間違っていると考えている。現に、ピーチの井上慎一CEOは「関西の人たちは合理的だから、価格が安い分、サービスが簡素化されていることを納得している」と発言している。確かに、関西と関東では消費者の考え方に少しは違いがあるだろうが、それよりも消費者にいかに上手に事前広報をするかの影響が大きいのではないだろうか。

ルディー和子/マーケティング評論家

ルディー和子/マーケティング評論家

早稲田大学商学学術院客員教授。
国際基督教大学卒業後、結婚・渡米を経て帰国、
米化粧品会社のエスティ ローダー社で働きながら
上智大学国際部大学院経営経済修士課程修了。
エスティ ローダー社ではマーケティングマネジャー、
出版社タイム・インク/タイムライフブックス社での
ダイレクトマーケティング本部長を経て、
マーケティング・コンサルタントとして独立、
自身の会社ウィトン・アクトンを設立
ルディー和子オフィシャルブログ

Twitter:@shouhigaku

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