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町田徹「見たくない日本的現実」

中国主導の国際金融機関設立で、日米が圧倒的敗北か 中国バブルの崩壊リスクも

文=町田徹/経済ジャーナリスト
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●欧州諸国もAIIBに追随

 では、途上国や欧州諸国に、AIIBはどう映るのだろうか。日本がかつて世銀の融資を受けて首都高速道路を建設したように、アジア、アフリカの途上国には巨額のインフラ整備資金が必要で、国際金融機関からの借り入れを切望している国が多い。ADBによると、アジア太平洋地域では、今後10年に約8兆ドル(約960兆円)の資金が必要という。深刻な資金不足が予測されていた。

 そうした中で、中国は資本金1000億ドル(約12兆円)のAIIBを今年中に設立し、最大でその資本金の半分を出資すると表明した。途上国からみれば、貸し手の国際金融機関が増えることは歓迎すべきことである。

 また、欧州諸国では、英財務省が3月12日にAIIBに参加する方針を表明したのを機に、ドイツ、フランス、イタリア、ルクセンブルグ、スイスが雪崩を打って追随した。アジア太平洋地域では、一旦は参加を見合わせた豪州が姿勢を転換して創設メンバーに入る協議に入ったほか、韓国や台湾も参加に意欲をみせているという。これらの国々が狙っているのは、AIIBが融資するインフラのプラントや工事の受注だ。もちろん、大口スポンサーの中国との関係強化に役立つという算盤を弾く国もある。

 さすがに、看過できなくなってきたのだろう。自国のAIIB参加には頑なな態度の米政府も、ホワイトハウスのアーネスト大統領報道官が3月17日の記者会見で態度を軟化し、「既存の国際機関を補完することが国際社会に利益をもたらす」とAIIBにIMF、世銀、ADBとの連携を呼びかけた。また、ロイター通信が新華社電の転電として伝えたところによると、IMFのラガルド専務理事は3月22日、AIIBとインフラ融資の分野で「喜んで」協力すると話したという。

 前述の麻生発言で明らかなように、日本が中国主導のAIIBに参加する可能性も皆無ではなくなってきた。マイナーな発言権しか得られなくても、AIIBで日本の立場を主張する方策を残すことには意味があるからだ。

 ただ、そうなった場合に日本政府は、ブラジルとインドが昨年7月半ばに同じ新興国の中国、ロシア、南アフリカとの間で創設に合意した「新開発銀行」のケースで採った戦略と比べて、自らの戦略性の稚拙さを反省する必要があるだろう。このケースでは、ブラジルとインドがスクラムを組んで、経済力で勝る中国の突出を抑えるため2年にわたる交渉を粘り強く続け、設立メンバーである5カ国が平等に100億ドルずつ出資するという合意にこぎ着けた。今後、新たな参加国を募り、最終的に1000億ドルまで増資するものの、設立メンバーである5カ国の出資比率が55%以下に落ち込まないように増資することにも合意しているという。

 日本もAIIB設立問題で、インドをパートナーにして、ブラジルが新開発銀行設立交渉で採ったような戦略を講じていれば、もう少し互角に中国と渡り合えたのではないだろうか。政府、財務省には反省すべき点がありそうだ。

町田徹/経済ジャーナリスト

町田徹/経済ジャーナリスト

経済ジャーナリスト、ノンフィクション作家。
1960年大阪生まれ。
神戸商科大学(現・兵庫県立大学)卒業。日本経済新聞社に入社。
米ペンシルべニア大学ウォートンスクールに社費留学。
雑誌編集者を経て独立。
2014年~2020年、株式会社ゆうちょ銀行社外取締役。
2019年~ 吉本興業株式会社経営アドバイザリー委員
町田徹 公式サイト

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