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小笠原泰「生き残るためには急速に変わらざるを得ない企業」

先祖返りするパナソニック、世界に背を向け「内向き」鮮明か 過去の成功体験への回帰

文=小笠原泰/明治大学国際日本学部教授

 車載電池に関しては、HV/PHEV(ハイブリッド車/プラグインハイブリッド車)とEV(電気自動車)向けの市場であり、13年の市場規模は3800億円程度といわれる。現在、EVはまだ市場が立ち上がっていないと表現できる状況なので、この車載電池市場とはトヨタ自動車が主導権を握るHV/PHEV向けであり、パナソニックはトヨタと合弁でプライムアースEVエナジーを設立している。トヨタ向けにニッケル水素電池を供給しており、現状では車載電池市場においては非常に強い立場にある。ちなみに、出資比率はパナソニックが19.5%、トヨタが80.5%であり、どちらが主導権を握っているかは明白である。

 パナソニックが車載電池に最も注力するのは当然であろう。パナソニックには、EVエナジーのほかに旧三洋電機の電池部門であるオートモーティブ&インダストリアルシステムズがあり、ホンダや独フォルクスワーゲン(VW)にニッケル水素電池を供給している。18年の計画では車載電池事業の売上高を6800億円と現在の倍以上を見込んでいる。

 しかし今後、過渡的製品といわれるHV/PHEVから本流のEVに市場が移行していく可能性を考えると、トヨタと一心同体に近いパナソニックの現在の強みをどうとらえるかは難しい。パナソニックは昨年7月、EVの寵児と呼ばれる米テスラ・モーターズと大規模電池工場建設で協力することを発表し、テスラにリチウムイオン電池セルの供給を行うとしている。パナソニックとしては当然の保険であろう。しかし、テスラの未来は不確定であり、最近ではアップルによる買収も取り沙汰されている。

 では、3番目の、センサーなど先進運転支援システムが主力の安全分野はどうか。この売上高計画も4400億円と倍増以上を見込む。この市場のカギは、2つある。一つは、モジュールを製造できるかどうかという点であろう。自動車産業がガソリン車からEVへ移行すれば、一台当たりの部品点数は現在の万単位から百単位に減るといわれている。つまり、モジュールを握れないと勝者にはなれない。現在のパナソニックは、この安全分野で先進支援運転システムをモジュールとして完成車メーカーに提供できる地位にはない。強いといわれる車載電池を見ても、テスラとの合意が示すように、車載電池モジュールをつくるのはテスラである。

●失敗に終わった半導体事業

 もう一つのカギは、モジュールを握れなくても、部品としてオンリーワンに近い圧倒的な強さを持っているかどうかであろう。津賀改革の中で、半導体部門を大きく整理縮小した経緯を考えるに、おそらくパナソニックの半導体関連のセンサーには、部品としての圧倒的な強みはないのではないか。詳細は次稿で考察するが、ソニーのCMOSセンサーの地位とは大きく異なる。

小笠原泰/明治大学国際日本学部教授

小笠原泰/明治大学国際日本学部教授

1957年生まれ。東京大学卒、シカゴ大学国際政治経済学・経営学修士。McKinsey&Co.、Volkswagen本社、Cargill本社、同オランダ、イギリス法人勤務を経てNTTデータ研究所へ。同社パートナーを経て2009年より現職。主著に『CNC ネットワーク革命』『日本的改革の探求』『なんとなく日本人』、共著に『日本型イノベーションのすすめ』『2050 老人大国の現実』など。
明治大学 小笠原 泰 OGASAWARA Yasushi

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