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江川紹子の「事件ウオッチ」第25回

今も心は信者のままーー【オウム高橋被告裁判】が露呈した、カルト問題の根深さと罪深さ

文=江川紹子/ジャーナリスト

 シズヱさんは、「事件に関与したことは後悔にならないんですか」と呆れた。

 現実を直視できない。自分が被害を与えた相手の気持ちを考えられない。それは、彼の心が、今も現役信者のままだからだろう。

 教祖については「グル」と呼び、「向こうが(自分を)弟子と思っているから分からないですけど、(師弟関係を)解消したという話し合いはないし、その関係は一応続いていると自分では思っている」と述べた。

 逃走中とはいえ、彼は社会の中で生活していた。しかし、心を開いて語れる相手もない彼の心の呪縛は、緩むどころか、強固なバリアに覆われて、むしろ強化されているようにさえ見える。

 高橋被告と4回にわたって面接した、オウムなど破壊的カルトに詳しい社会心理学者の西田公昭立正大教授は、彼の中でオウムは濃縮し、「クリスタライズ(結晶化)している」と見る。「アレフに残った信者の状況も、同じようなものだろう」と西田教授。

 平田被告のように、自ら考えるようになった者もいる。元信者やカウンセラーの協力を得て、呪縛から解き放たれた者もいる。けれども、オウムのマインドコントロールからの解放は、そう簡単ではなく、会社を辞めるようにはいかない。

 西田教授はこうも指摘する。

「よくテレビにも出ているオウムの元幹部も、(教団や麻原に否定的な発言をしているからといって)マインドコントロールの問題は解決していないですね」

 そこが、カルトの怖さでもある。(文=江川紹子/ジャーナリスト)

江川紹子/ジャーナリスト

江川紹子/ジャーナリスト

東京都出身。神奈川新聞社会部記者を経て、フリーランスに。著書に『魂の虜囚 オウム事件はなぜ起きたか』『人を助ける仕事』『勇気ってなんだろう』ほか。『「歴史認識」とは何か - 対立の構図を超えて』(著者・大沼保昭)では聞き手を務めている。クラシック音楽への造詣も深い。


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