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清水和夫「21世紀の自動車大航海」(4月2日)

タカタ製エアバッグ死亡事故の謎 原因の「多湿」評価項目は国際安全基準にも規定なし

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タカタ本社が所在するアークヒルズ(「Wikipedia」より/Chris 73)
 前回の3月13日付本連載記事『タカタの死亡事故エアバッグ、なぜ生まれたのか?疑惑やずさんな生産管理が次々露呈』に引き続き、自動車のエアバッグ問題について考えてみたい。

 そもそもエアバッグは、1980年に独メルセデス・ベンツが現在のSクラスに採用したのが実用化の始まりだ。しかし、本格的に普及したのは本田技研工業(ホンダ)が積極的に量産車に採用するようになってからである。エアバッグはシートベルトと自動車のボディだけでは守れないような激しい衝突から、乗員の命を守る安全装備として世界的に標準化が進んだ。衝突後わずか30ミリ秒つまり0.03秒でバッグを開く技術で、その信頼性の確保が重要かつ最も難しい技術課題であった。ホンダは当時大手のシートベルトメーカーであったタカタと共同で、エアバッグの開発に乗り出したのである。

 その構造はシンプルで、ハンドルの中央部に円盤状(助手席は筒状)のインフレーターと呼ばれる金属製ケースが配置されている。インフレーターの中には、プロペラントと呼ばれる火薬がペレット状(粉をプレスして固形化したもの)に加工されて複数組み込まれている。衝突を検知すると火薬が爆発し、ナイロン製のバッグが一気に膨らむ仕組みだ。

 その様子は、各国で行われた自動車の安全性評価、NCAP(新車アセスメントプログラム)が公開している映像で見ることができるが、エアバッグの展開がわずかに遅れただけで、運転席のダミー人形はハンドルに頭部をぶつけることもある。衝突エネルギーも大きいが、エアバッグの爆発力も負けていない。そのくらい大きなパワーがないと、乗員をしっかりと拘束することができないのだ。そのおかげでエアバッグは約3万5000人の命を救ったとの米国のデータがある。

●自動車メーカー各社を悩ませた、化学成分問題


 エアバッグに使われるプロペラントとしてはアジ化ナトリウムが使われていたが、発がん性や廃棄時の土壌汚染が懸念され、日本の厚生省(当時)も1990年代中頃に毒物指定にした。各国のエアバッグメーカーはアジ化ナトリウムの代替品を探したが、そこで登場したのが硝酸アンモニウムと硝酸グアニジンであった。プロペラントとしての爆発力は硝酸アンモニウムが優れているが、不安定で扱いにくい特性をもっていた。タカタ以外のエアバッグメーカー(インフレーターだけを製造するメーカーも含めて)は硝酸アンモニウムを使うことを断念し、安定性が高い硝酸グアニジンを使用した。

 筆者は1997年に書籍『クルマ安全学のすすめ』(NHK出版)を上梓しており、その時にもエアバッグに関してタカタを取材している。当時はアジ化ナトリウムが使えなくなるので、非アジ化ナトリウムという呼び方で代替品を研究していた。