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小林敬幸「ビジネスのホント」

糞便移植で病気治癒?腸内細菌研究の衝撃 病気・肥満・認知症に多大な影響 

文=小林敬幸/『ビジネスの先が読めない時代に 自分の頭で判断する技術』著者
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 一方で、効果が証明できなかったり副作用がはっきりしない商品は、売り上げを急減させるかもしれない。いずれにしても、すでにある大きな市場に直接関係するイノベーションなので、短期的に大きなビジネスになる可能性がある。

 ビジネスとしては、「マイクロバイオーム」という言葉で調べていくと、さまざまなビジネスチャンスを知ることができる。マイクロバイオームとは、腸に加えて口腔、皮膚などの常在菌全般を指しており、すでに欧米ではいくつかのマイクロバイオームのべンチャーが出てきている。この分野の新規ビジネスは、概ね3つの種類がある。

(1)シークエンサー
  腸内細菌を一挙に遺伝子解析する装置。メーカーおよび装置を使ったデータ解析サービスなどのビジネスがある。このイノベーションの基盤となるビジネスだ。

(2)特定の腸内細菌
  効果・効用がある腸内細菌、あるいはそういう菌を育てるエサ(プレバイオティクス)を製造・販売するビジネス。既存の・サプリ・健康食の巨大市場を狙える。

(3)個人向けB2Cビジネス
  個人の腸内フローラを調べ、個別の対応策を講じる消費者個人向けビジネス。アンチエイジング、エステなどの高額サービス商品で、マスの消費者に売り込むこともあり得る。

 ビジネスの視点で見ると、ヒトゲノムの解析よりも腸内フローラ分析のほうに、速くて実利的な可能性を感じる。ヒトゲノムは解析し終わっても、期待ほどには身近に感じる革新的ビジネスがすぐには起こらなかった。

 その理由の一つは、人間個人の遺伝子は変わらないのに対して、腸内フローラは食事や前述した糞便移植法で後天的に変えやすい。また、ヒトゲノムは、遺伝子解析を終えてから解決策を探しているが、腸内フローラではサプリ、健康食品など、改善法の候補がすでに世にたくさんある。その処方と作用の仕組みを実証することで、ビジネスがすぐに拡大する。 

 つまり、ヒトゲノムは個人の遺伝子がわかったところで、「さて何をすればいいか」という解がすぐには提示できなかった。それに対して、腸内フローラは調べた後に打てる現実的な対策の候補がたくさんある。だから、ビジネスとしてすぐに成立する可能性が感じられる。

 想定例としては、アンチエージングサービスとして、定期的に各個人の糞便をメタゲノム解析し、腸内フローラの状態に合わせて最適な細菌を腸まで届くカプセルに入れて処方するというような企業が出てくるかもしれない。それで、食べても太らず、アレルギーが軽減され、肌もきれいになり、うつや認知症の予防になるとなれば、富裕層で毎月何万円も払う人がいてもおかしくないだろう。

小林敬幸/『ふしぎな総合商社』著者

小林敬幸/『ふしぎな総合商社』著者

1962年生まれ。1986年東京大学法学部卒業後、2016年までの30年間、三井物産株式会社に勤務。「お台場の観覧車」、ライフネット生命保険の起業、リクルート社との資本業務提携などを担当。著書に『ビジネスをつくる仕事』(講談社現代新書)、『自分の頭で判断する技術』(角川書店)など。現在、日系大手メーカーに勤務しIoT領域における新規事業を担当。

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