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雨宮寛二「新・IT革命」

グーグルグラス、人の行動を「支配」?人の行動を記録し、環境に即して次の行動を提示

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「グーグルグラス 開発者向け」
 グーグルグラスは従来のコンピュータとは異なり、ウェアラブルコンピュータとして2つの方向性でイノベーションに必要な「非連続性」を秘めている。

 まず、動作環境の面で、人としてより自然な行動を促してくれるようになるというのが第一の方向性である。それを可能にしたのが、「AR(Augmented Reality:拡張現実)」である。ARとは、現実の世界で知覚される情報に、デジタル化された情報を追加することで人の現実認識を強化してくれる技術である。グーグルはこの技術をグーグルグラスに取り入れることで、ウェアラブルの特性を大いに生かした。

 例えば、行きたい場所に向かう際、グーグルグラスは道順を今見ている現実の景色に、地図や矢印といったデジタル化された情報を重ね合わせて示してくれる。これにより、人は進んでいる方向から視線をそらすことなく、眼前で起こる現実を自然に受け入れられる。

 これがスマートフォン(スマホ)であれば、今いる位置をスマホで確認しなければならず、進むべき方向に視線を向けることができなくなるので、余計な動作が必要となり、人の自然な行動を妨げることになる。グーグルグラスはまさにこうした情報取得に関わるコストを取り除き、新たな別の情報を取得する余裕を生み出してくれる。

●アンティシペーション・コンピューティング


 また、グーグルグラスは人の行動や環境といったコンテクスト(文脈)を理解し、行動を予測しながら新たな情報を示してくれる可能性を秘めている。これが第二の方向性である。グーグルグラスでは、すでにGoogle Nowを取り入れて、こうした方向性を実現するための開発を進めている。

 すなわち、Google Nowによるスケジュール情報を位置情報などと連携させて、人がいかなる情報を必要とするかを予測したうえで、個人ごとにカスタマイズした情報を自動的に提示してくれる。

 こうしたアンティシペーション・コンピューティング(ある情報から、次に必要だと予測される情報を判断するコンピュータ技術)の実現を可能にする技術こそが、「AI(Artificial Intelligence:人工知能)」である。AIは人の行動をロギング(記録)し、それを即座に次の行動へと反映するよう情報を解析してくれる。グーグルはAIをグーグルグラスに搭載することで、ウェアラブル端末としての特性を生かした。

 というのも本来、ウェアラブル端末は常に眼前の情報をリアルタイムに取得することができる特性を持つため、最新の情報をロギングして人の行動に反映するといった、いわゆる情報発信型のデバイスとして機能することで、その特性を十分に生かすことができるからである。グーグルグラスは、まさにコンテクストを瞬時に理解し、人の次なる行動や環境に即して必要な情報を新たに示唆してくれるのである。

 それでは、グーグルはこうした2つの方向性からグーグルグラスの革新性を実現することができるのか。次稿では、グーグルグラスの開発リスクと将来性について検証してみたい。
(文=雨宮寛二/世界平和研究所主任研究員)