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雨宮寛二「新・IT革命」

グーグルグラスの開発は前途多難 人間の生活を変える可能性も

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グーグルグラス(「Wikipedia」より/Mikepanhu)
 4月13日付当サイト記事『グーグルグラス、人の行動を「支配」?人の行動を記録し、環境に即して次の行動を提示』で述べたように、グーグルグラスはウェアラブルという特性を生かして2つの方向性の実現を可能にする。それは、AR(拡張現実)によってより自然な行動を促してくれること、AI(人工知能)によって人の行動や環境などのコンテクスト(文脈)を理解し、行動を予測しながら新たな情報を示してくれることである。

 グーグルは、この2つの方向性でグーグルグラスの「革新性」を生み出そうとしている。これは、同社のエリック・シュミット会長が語るように「長期的なプロジェクト」でなければ実現させることは不可能であろう。グーグルとしては、将来的な実用化に至るまでのリスクをすべて受け入れる覚悟ができているわけである。

 ただし、リスクはARやAIの実用化といった技術面だけに止まらない。規制やモラルなどの面からも不透明な問題は残る。一般の消費者に普及させるためには、規制面でのリスクが最大のハードルとなりうる。この点、同じウェアラブル市場でアップルウォッチの製品化を実現したアップルに一日の長がある。アップルは、ウェアラブル端末の開発に当たって、規制面でのリスク回避が可能なスマートウォッチを選択した。グーグルグラスは眼鏡という特性から、歩行上の問題で規制面での壁に直面することは避けられない。両者の違いは、これまでの端末製品開発における経験値に起因するものであろう。

 アップルウォッチが製品化されたことにより、ウェアラブル市場における独自ブランドの開発という点で、グーグルはアップルに先行を許している。グーグルグラスを「長期的なプロジェクト」として位置づけるグーグルにしてみれば、今後もその差は開くばかりである。このような状況において、グーグルは今後も長期的な視野に立ってグーグルグラスに投資し続けていくことができるだろうか。極めて疑問である。

 しかし、グーグルが前述の2つの方向性を実現し、「革新性」を伴うグーグルグラスを製品化できれば、ウェアラブル市場で後世に名を残すことも可能である。なぜなら、コミュニケーションテクノロジーとウェアラブル端末の組み合わせは、ICT(情報通信技術)市場でウェアラブルコンピューティングという新たな領域を生み出し、その領域でイノベーションが創出されることで、今後、グーグルグラスはコミュニケーションツールのメインストリームとなる可能性を秘めているからである。

 人間がコンピュータの存在を認識することなく、五感で情報を操作できる時代はすぐそこまで来ている。その中で、グーグルグラスは健康で豊かな生活を切り開き、パラダイムの転換を可能にする潜在性を秘めている。その実現はグーグル次第だが、今後もグーグルグラスの動向から目が離せない。
(文=雨宮寛二/世界平和研究所主任研究員)