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高井尚之が読み解く“人気商品”の舞台裏

チェキ、なぜ土壇場から劇的復活?韓国・中国での人気、競合企業の破産を追い風に活性化

文=高井尚之/経済ジャーナリスト・経営コンサルタント

競合が破産し、残存者利益

 富士フイルムは05年度にチェキの年間販売台数が10万台に落ち込むと、新機種の開発を休止し、カラーバリエーションを増やして販売を継続した。同社がリストラクチャリング(事業の再構築)に取り組み、次世代の成長事業を医薬品や化粧品などヘルスケア分野にシフトすると、商品存続の正念場を迎えた。

 だが、そんな時期に同社は「韓国のテレビドラマでチェキが偶然使われ、話題になった」ことを聞きつけた。これを受けて韓流スターを活用したプロダクトプレイスメント(映画や番組中で、特定の商品を使用させる広告手法)を仕掛けたところ、韓国内での販売が伸長。さらに中国の人気モデルがブログで「チェキを使っている」と紹介したことで、中国にも人気が波及した。

 ちょっとレトロでおしゃれなカメラが生み出すカードサイズのプリントや、デジタルプリントとは違うインスタント特有の柔らかな画質が、デジタル化が進む中にあって若い女性を中心に評判となっていたのだ。

 一方で、ライバルだったポラロイド社は08年に経営破たんした。競合が市場から退場した結果、同社は世界で唯一のインスタントカメラとフィルムを手がけるメーカーとなった。

 海外市場の押し上げにより10年度の年間販売台数が87万台と復活し始めたチェキは、「世界で一番“カワイイ”カメラ」をコンセプトに商品リニューアルに取り組んだ。

 そして12年、新製品として「“チェキ”instax mini 8」を発売した。使いやすい操作性はそのままに、撮影機能を充実させて女性ユーザーが好む、明るくソフトな雰囲気の写真が簡単に撮影できるのが特徴で、ホワイト、ブラックのほかにパステルカラーのピンク、ブルー、イエローの全5色を揃えた。さらに13年9月には最上位機種「“チェキ”instax mini 90 ネオクラシック」も投入。その後も新製品や人気キャラクターとのコラボ製品を相次いで投入するなど、同ブランドを活性化させてきた。

 こうした手法も成果を上げた結果、チェキの年間販売台数は最も低迷した時期の30倍以上となった。ライバルが消えた結果として、ビジネス用語でいう「残存者利益」も手にした。

 ちなみに、この現象はファクシミリ市場に似ている。ファクシミリも情報や連絡の受発信の主役から退き、専用機を販売するメーカーも少なくなったが、それでも根強く販売し、新商品を投入するメーカーには残存者利益をもたらしている。

高井尚之/経済ジャーナリスト・経営コンサルタント

高井尚之/経済ジャーナリスト・経営コンサルタント

学生時代から在京スポーツ紙に連載を始める。卒業後、(株)日本実業出版社の編集者、花王(株)情報作成部・企画ライターを経て2004年から現職。出版社とメーカーでの組織人経験を生かし、大企業・中小企業の経営者や幹部の取材をし続ける。足で稼いだ企業事例の分析は、講演・セミナーでも好評を博す。近著に『20年続く人気カフェづくりの本』(プレジデント社)がある。これ以外に『なぜ、コメダ珈琲店はいつも行列なのか?』(同)、『「解」は己の中にあり』(講談社)など、著書多数。

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