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永井孝尚「企業の現場で使えるビジネス戦略講座」

縮小する国内家電業界で、海外メーカーが続々参入し躍進する理由 日本企業が失った「力」

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エレクトロラックスの掃除機「エルゴスリー」
「当社の場合、業界全体がコモディティ化(=商品などが汎用化して差別化が難しくなること)している。だから価値を創造して成長するのは、なかなか難しい」

 多くの業界でこのような話をよく耳にする。しかし実際には、コモディティ化した業界の中で新たな価値を創造し成長している企業は少なくない。

 たとえば国内白物家電市場はコモディティ化している業界の筆頭だろう。しかし、そのような家電業界でも成長している企業がある。「黒船家電」と呼ばれる海外家電メーカーだ。そこで今回は、黒船家電の中でも躍進著しい掃除機市場をみてみよう。

「静音」でシェアを伸ばすエレクトロラックス


 掃除機市場では、サイクロン技術を擁するダイソンや、自動お掃除ロボット「ルンバ」を擁するアイロボットといった黒船家電メーカーが成長している。それぞれ「世界で唯一吸引力の落ちないこと」や「自動ロボット」といった尖った機能を売りにしている。

『戦略は「1杯のコーヒー」から学べ!』(永井孝尚/KADOKAWA/中経出版)
 ほかにも国内掃除機市場で伸びている黒船家電メーカーがある。北欧スウェーデンのエレクトロラックスだ。まだ日本国内では小規模だが、売り上げは11年の61億円から13年は93億円へと急拡大している。同社は12年、日本市場に特化して開発された掃除機「エルゴスリー」を発売した。この掃除機の特徴は音が静かなことだ。「掃除機は音がうるさい」という常識を覆し、赤ちゃんが寝ていたり家族がテレビを見ていても、安心して掃除機をかけることができる。一方でライバルのダイソン、ルンバ、日本メーカーの掃除機は構造上、音がうるさい。

 エレクトロラックスは優れた静音技術を生かして、エルゴスリーを開発できた。しかし、考えてみれば日本の多くの家電メーカーも、さまざまな優れた技術力を持っているはずだ。ではなぜ日本の家電メーカーは低迷し、黒船家電は躍進しているのか。

消費者自身が気づいていない課題を先取りして解決


 そこには考え方の違いがある。エルゴスリーは「掃除機は音がうるさい」という常識を、静音技術を生かして覆した。このようにエレクトロラックスは、消費者自身が「当たり前」と思っていて気がついていない課題を先取りして解決することで、成長しているのだ。

 しかしここで疑問が残る。なぜエレクトロラックスは、成熟市場である白物家電でビジネスを展開しているのか。そこには同社ならではのしたたかな戦略がある。その成熟市場にあっても顧客が気がつかないニーズを掘り起こし続け、自社の強みを生かし応えることが、差別化の源泉になるということを理解しているのだ。ここまで考えると、低迷する日本の家電メーカーを尻目に黒船家電が成功している理由がわかるだろう。