NEW
永濱利廣「“バイアスを排除した”経済の見方」

日本経済と乖離する日本企業 賃金抑制と製造業空洞化を招いた国の怠慢 農業保護の代償

【この記事のキーワード】

, ,

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
(出典)KPMG、第一生命経済研究所
 日本経済の地盤沈下の裏には、企業の分配構造の変化により、従業員や支払利息への分配率低下と、海外を中心とした設備投資への分配率上昇がみられる中で、内需が低迷してきたという側面もある。


 この背景にも、新興国の台頭を契機とする経済のグローバル化がある。つまり、(1)製造業の生産拠点や販売市場の国際化、(2)マネーの国際化による資源高、(3)株主構成の国際化、といった要因によって輸出企業が景気回復を主導しても賃金が伸び悩み、内需が盛り上がらない構造が影響しているといえる。

 今世紀以降は、先進国と新興国、資源国が相互に依存するかたちで世界経済が変動してきており、日本経済も世界経済に影響されやすくなっている。そして、日本企業が新たに生産拠点の海外移転や委託、販売市場のグローバル化を進めてきたことも内需低迷の一因となってきた。また、販売の面でも人口減少で伸び悩む国内市場を補うため、企業の海外市場の開拓が進み、企業業績の海外依存度が高まってきた。

 さらに海外進出の理由となってきたのが、新興国の人件費の安さや市場の成長期待だけではなく、関税や法人税といった税制面で日本が後れを取ってきたことである。近年では、各国のFTA(自由貿易協定)やEPA(経済連携協定)による貿易や投資の自由化の進展により、ヒト・モノ・カネ・サービス・情報のすべてにわたって、国境を超える移動を妨げる障壁が低くなっている。

 こうした中、日本企業はFTA締結に積極的なASEAN(東南アジア諸国連合)諸国などの生産拠点から輸出を拡張し、日本政府が自由貿易圏の構築に後れを取る中で製造業の空洞化が着実に進んできた。

 日本がFTAやEPA交渉で他国に後れを取ってきた原因の一つに、農産品の市場開放問題がある。すなわち、農業従事者の雇用維持や食料自給率低下を防ぐ目的で、一部の品目に高い関税が課されている。しかし、農業では従事者の6割が65歳以上であり、新たな担い手が必要とされているにもかかわらず、他産業に比べて著しく所得が低く、雇用の受け皿としての期待にこたえる将来像が描けていない。一方で、所得向上の一役を担うと期待される大規模で効率的な経営を行う法人の数は増加しているが、その進展は不十分であり、数々の制度問題が農業の効率化を抑制している。このように、日本経済の地盤沈下の背景には、農産物市場開放問題も関係しているといえる。

法人税パラドックス


 法人税率の高さも、日本経済の地盤沈下を助長してきた。これまで、海外諸国では経済のグローバル化に伴う資本移動の高まりを背景に、国際競争力強化や経済活性化を見据えた法人税率の引き下げが相次いできた。こうした情勢の中で、日本の法人実効税率もようやく2016年度に31.33%まで引き下げられることが決まったが、海外の平均水準と比較すれば依然として5%以上も高い。