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雨宮寛二「新・IT革命」

米国、「ネットは公共財」と規定し「差をつけること」を禁止 うごめくグーグルの思惑

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検索サイト「グーグル」
 米グーグルの通信サービス提供の動きが活発化しつつある。3月には米国においてMVNO(通信会社から回線を借りる仮想移動体通信事業者)方式で数カ月以内に独自の通信サービスを始める方針を表明した。これは、2012年に独自の光回線でインターネット接続事業に参入した固定通信サービスの参入に続くものである。

 こうした通信サービスにおけるグーグルの一連の動きは、米AT&Tに代表される通信事業者への揺さぶりとみられる。その背景には、米国で10年以上前から続いている「ネットワーク中立性(Network neutrality)」の議論が、両者を取り巻く根深い問題として立ちはだかっている。この議論は、ブロードバンド普及などにより急増したネット上のコミュニケーションを、どのようにして公平に支えていくかをめぐるものである。

 FCC(米連邦通信委員会)は2月、ネット中立性を定めた新たな規則を採択した。これにより、ネットは公共財と位置づけられ、通信事業者がネットサービス事業者に差をつけること(反競争的な行為)は許されず、FCCの監督下に置かれることになった。この新ルール採択の原動力となったのは、FCCの当初案に対して「有料で優先権を買い取る抜け穴になり得る重大な弱点がある」と指摘したグーグルの主張にあった。

特別に通信料を徴収することの弊害


 2000年代後半以降急成長しつつあるアプリ経済(ネット上でアプリケーションなどの各種サービスを提供するビジネス)は、今やインターネット経済の中で大きく台頭するまでになっている。YouTubeやHulu、ネットフリックスに代表されるネットサービスは、ネットの通信量を増加させた。特に、ネットフリックスは米国のネット通信量の3割を占めるともいわれている。

 莫大な費用を投資してインフラを運営している通信事業者からすれば、こうした通信量を増やす事業者に対して相応の費用を通信料として求めることはビジネスとして正当だというわけである。実際、14年4月にブロードバンド通信事業者のコムキャストは、ネットフリックスと通信料支払い契約を結んでいる。

 だが、このように特別に通信料を徴収するのは、ネットサービス事業者側から見れば、通信の優先権を有料で買い取ることにも通じる。一部の企業に有利な条件で通信網を利用させることは、消費者のネットへのアクセスを阻害したり制限したりすることにつながる可能性を否定できない。この点を危惧して、グーグルはFCCの当初案が抜け道となり得る点を指摘したわけである。

 それでは、今回のFCCの新規則で有利な展開に持ち込んだグーグルは、どのような観点から既存の通信サービスに風穴を開けることができるのであろうか。次稿では、この点について検証してみたい。
(文=雨宮寛二/世界平和研究所主任研究員)