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雨宮寛二「新・IT革命」

グーグル、通信事業参入の衝撃 従量課金、未使用分は実質キャッシュバック 業界の驚異に

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検索サイト「グーグル」
 5月11日付当サイト記事『米国、「ネットは公共財」と規定し「差をつけること」を禁止 うごめくグーグルの思惑』で述べたように、2月にFCC(米連邦通信委員会)が採択したネットワークの中立性(ネット中立性)に関する規則は、ネットを公共財と位置づけ、通信事業者がネットサービスに差をつけることを許さず、FCCの監督下に置くというものであった。

 ネットフリックスなどに代表されるネットサービスを提供する一連の企業は、今回の規則がネット中立性を保護するものであり、通信事業をFCCの監督下に置き規制強化を図る点から支持し歓迎している。ネットサービスを提供する側にしてみれば、ネット中立性の規制強化が図られれば、特別な通信料を支払わなくても公平かつ自由にネットの恩恵を享受できるというわけである。

 一方で、コムキャストなどのブロードバンド通信事業者側からすれば、今回の規則は納得のいくものではなかろう。ブロードバンド通信事業者が特に懸念しているのは、FCCがブロードバンド通信事業者を1934年通信法第2条(Title2)に定めるコモンキャリア(公益通信事業者)に再分類している点にある。なぜなら、これにより通信料金の設定や課税を行う権限がFCCに与えられ、将来的に消費者の利用料金の上昇やイノベーションの停滞を引き起こし、消費者の便益を損ねることにつながりかねないからである。よって、ブロードバンド通信事業者としては、今回の規則を阻止するために今後FCCを提訴する可能性は高い。

グーグルの牽制


 こうしたブロードバンド通信事業者の動きを牽制する狙いも含めて、グーグルはあえてこの時期(3月)にMVNO(仮想移動体通信事業者)方式による独自の通信サービスを始める方針を表明した。

 グーグルは通信サービスへの参入に当たり、既存の通信事業者が設定する料金体系に風穴を開けようとしている。従来の定額制ではなく、使用したデータ通信量に応じて月額の支払い料金を決める従量制を採用し、その上で未使用のデータ通信を翌月に繰り越すというものだ。従量制やデータ通信の翌月繰り越し制度をすでに導入している通信事業者は散見されるが、グーグルのケースでは、翌月繰り越しをクレジットとして加算するため、顧客にとっては実質的なキャッシュバックとなる。

 グーグルのこうした新たな料金体系導入の狙いは、成熟しつつある携帯電話産業において、価格競争を促し、インターネットの利用者をさらに増やしていくことにある。だが、忘れてならないのは、価格競争の促進はあくまでも、消費者の便益を高めることを前提にしたものでなくてはならない。

 今後も、消費者の便益を高めるサービスや料金体系が積極的に導入されることを期待したい。
(文=雨宮寛二/世界平和研究所主任研究員)