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雨宮寛二「新・IT革命」

アップルに絶えない噂 既存製品の改良に余念なし、革新性は失われたのか?

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「アップル HP」より
 アップルの動きが不気味である。創業者のスティーブ・ジョブズが生きていた時の快進撃は影を潜めたが、革新的な製品として生み出したiPodやiPhone、iPadの改良や改善に余念がない。今や年間400億ドルもの利益を叩き出し、手元資金は1780億ドルを超える。

 この原動力になっているのが、アップル製品の乗り替え率の高さである。例えばiPhoneでは、旧型iPhoneから新型iPhoneへの乗り換え率が7割を超える(業界標準は2~3割)。もはや既存製品の改良や改善に主軸を移したアップルの強みは、このように毎年定期的に投入する新型モデルを既存顧客に売り切る力にある。非連続的な変化を生み出せないまでも、アップルは着実に既存製品の改良や改善といった連続性を強固なものとしつつある。

 ITの世界では、テクノロジーは移ろいやすい。既存の技術はほどなく新しい技術に追いやられる。それゆえ、どの企業も研究開発に力を入れ、次なるムーンショット(壮大な成功)を目指す。アップルも既存製品の改良や改善への投資を継続する一方で、次なる一手を着実に打ちつつある。

 5年ぶりの新製品として先頃、アップルはApple Watchを世に送り出した。Apple Watchでは革新性を見いだせないまでも、デザイン面という自社が強みを持つ領域での展開に持ち込むあたりは、アップルの老獪さを感じる。

 革新性を失わないためにこうした非連続的な変化を模索し、画期的な製品の開発を目指す努力を継続していくことが、新たなヒットにつながることを、どの企業よりも理解しているのがアップルであろう。

iCarに革新性を見いだすことができるのか


 今年に入ってから、iCarの噂が絶えない。アップルが次なる市場として狙うのは、果たして自動車産業なのか。アップルが目指すとされている電気自動車(EV)の開発はすでに複数の企業が着手し製品化に、漕ぎ着けている。その最たる企業がイーロン・マスクCEO(最高経営責任者)率いるテスラモーターズだ。

 現在のアップルの手元資金からすれば、時価総額が250億ドルほどのテスラは容易に買えよう。アップルにしてみれば、テスラ買収は技術開発に長い年月とコストをかけるよりも、はるかに効率的な選択肢となる。

 では、アップルはiCarに革新性を見いだすことができるのであろうか。

 既存製品の改良や改善といった現在のアップルの連続性を追求する力を維持しながら、非連続的な変化を起こすことができれば、アップルの経営は盤石なものとなる。新たなるムーンショットを連発し、いわゆる両利きの経営が現実のものとなれば、アップルのイノベーションの第3章の幕が開き、後世に語り継がれることになろう。
(文=雨宮寛二/世界平和研究所主任研究員)