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山本康博「なぜあの商品はヒットしたのか/しないのか」

相次ぐ「バカ売れ」による販売休止や欠品、意図的な品薄商法はあり得る?なぜ起こる?

文=山本康博/ビジネス・バリュー・クリエイションズ代表取締役
相次ぐ「バカ売れ」による販売休止や欠品、意図的な品薄商法はあり得る?なぜ起こる?の画像1サントリー「南アルプスの天然水&ヨーグリーナ」

 3~4月にかけ発売されたサントリー食品インターナショナルの「南アルプスの天然水&ヨーグリーナ」「レモンジーナ」が、想定を大きく上回る販売量となり生産が追いつかず一時出荷停止に追い込まれ話題を呼びました。また、2月にも「ハーゲンダッツ ミニカップ」の「華もち・きなこ黒みつ」「華もち・みたらし胡桃」が“売れすぎ”で発売わずか2日後に販売休止を発表するなど、人気商品の欠品が相次いでいます。そしてそのたびに、「わざと少なめに生産し、市場での枯渇感をあおる品薄商法ではないか」などと噂が飛び交っています。

 ここ数年、食品に限らず自動車や旅行までさまざまな分野で「限定」商品やサービスがあふれ返っていますが、限定品の発売にはいくつかのメリットとデメリットがあり、提供元企業としても悩むところです。筆者自身も伊藤園、日本コカ・コーラ、JTなどの飲料メーカーで長年商品企画をしてきましたが、メーカー目線の本音ベースで分析すると次のようなメリットとデメリットがあります。

【メリット】
(1)顧客に「買わなきゃ!」と思わせることでブランドの鮮度が向上ができる
(2)売り場、棚の確保をできる
(3)SNSなどでの話題喚起ができる
(4)なくなったら終売にできる(当然、早すぎると問題が発生する)

【デメリット】
(1)ブランドエクステンション(すでに成功しているブランドのカテゴリに新商品を投入すること)によって、メインブランド価値がぶれてしまう
(2)売り場で限定商品の棚をもらうときに、メインブランドが棚落ちしてしまう
(3)評判が思わしくなければマイナスの話題となる
(4)早く欠品するとメーカーバッシングが起こり、販売現場からペナルティーが科されることがある

 ブランド価値が強大で安泰な状態の場合には、ブランドエクステンションや限定商品発売も有効ですが、そうではない場合、メーカーのブランド担当者は限定品発売に及び腰になります。なぜなら、限定品に限らず新商品が売れすぎで欠品してしまうと、さまざまな部門関係者、流通業者などから猛烈な苦情の嵐を受けて大変なことになるからです。

 メーカー側はそのリスクを百も承知なので、戦略的にわざと少なめに生産する品薄商法を行うようなことはないと思いますが、「絶対にやっていない」と言い切れない部分もあります。たとえ欠品を社長が謝罪しても、大企業の場合は現場と経営層の距離が遠いため、社長が一新商品の初期在庫や初月生産をチェックしないのをいいことに、現場レベルで品薄商法的な行為を行っている可能性はゼロとは言い切れません。

山本康博

山本康博

ビジネス・バリュー・クリエイションズ
代表取締役、損保ジャパン顧問。ブランドマーケッター。日本コカ・コーラ、日本たばこ産業、伊藤園でマーケティング、新商品企画・開発に携わり、独立後に同社を設立。これまで携わった開発商品は120アイテム、テレビCMは52本制作。1年以上継続した商品は計算すると3割以上、メーカー側でマーケティング実績35年。現在では新商品開発サポートのほか、業界紙をはじめとしたメディア出演や寄稿、企業研修、大学等でのセミナー・講義なども多数実施。たたき上げ新商品・新サービス企画立ち上げスペシャリスト。潜在ニーズ研究家。著書に『ヒットの正体』(日本実業出版社)、『現代 宣伝・広告の実務』(宣伝会議)、2016年スタンフォード大学 David Bradford 名誉教授、ボストンカレッジ Allan Cohen 教授の推薦書として、世界に向けて英著、 “Stick Out”a ninja in Japanese brand marketingを全世界同時発売開始。『Stick Out~a ninja marketer』(BVC)、現在ブレイク中で話題のAmazon書籍総合1位も獲得したベストセラー『1日1話、読めば心が熱くなる365人の仕事の教科書』(致知出版)の一人として8月1日執筆など。

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