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“天下分け目”の自販機争奪戦!サントリー、衝撃的ウルトラCで制す!

文=福井晋/フリーライター
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サントリーが争奪戦に勝った意外な理由

 応札締め切り前、株式市場では「JBの買収額は1000億円規模」と予想されていた。実際、「応札予定各社は1000億円を目安にJTと水面下で駆け引きしていた」(業界関係者)という。ところが、ふたを開けてみると、サントリーの提示額はこれをはるかに超えていた。では、サントリーはなぜこんな勝ち方ができたのか。

 実は、JTは清涼飲料事業売却に当たって「JBと『Roots』『桃の天然水』などの商品ブランドは切り分けて売却する」以外は明確な入札条件を提示せず、買収サイドに応札条件の逆提案を求めていた。売却額吊り上げが目的だったのは言うまでもない。

 このため、応札予定各社は「開示情報が少なく、デューデリジェンス(事業価値の査定)も満足にできず、JTの売却予定額が皆目わからなくて右往左往していた」(同)といわれている。

 そんな中で「商品ブランド込みで1500億円という他社が想像もしなかった買収額をサントリーが提示できたのは、JB株式の12.0%を保有し、JTに次ぐ2位株主の地位にいたからだ。つまり、サントリーは今回の売却話が出る前から、出資関係を通じJTに買収工作をしていたとしても不思議ではない。情報不足の他社と異なり、これまでのJTの感触から、買収額の落とし所をつかんでいたのではないか」と、前出関係者は推測する。

 もし、この推測が当たっているとすれば、今回の買収も、先を見越して用意周到に行動するM&A巧者のサントリーに、他社は出し抜かれたということになりそうだ。

 とはいえ、JB買収完了後のサントリーも楽ではない。JBの純資産は585億円(14年12月期)。しかし、サントリーが今回の買収で取得するのは、JTの株式保有分70.5%。つまり、資産に組み込めるのは約412億円ということになる。この約412億円と買収額1500億円の差額である約1088億円がのれんとなる。

 こののれんを限度いっぱいの20年で定額償却したとしても、サントリーは毎年約54億円ののれん償却をしなければならない。しかもJBの営業利益は25億円(14年12月期)。したがって、サントリーは単純計算で毎年29億円の赤字を垂れ流す会社を抱えるかたちになる。

 これについてサントリーの鳥井社長は、5月25日の記者会見で「当社の自販機と資材の共同調達や配送ルートの効率化を行えば、規模の経済性により、今よりコスト削減が進む」と説明、あまり気にしていない様子だ。

 具体的には、買収による自販機運営効率化で年間70億円程度の収益改善が可能と見ており、自販機ベンダー事業は赤字にならないとの認識だ。しかし、証券アナリストの一人は「近年は円安による資材高騰、ドライバー不足による物流費高騰などが続いているので、コスト削減はそれほど容易でない。少なくとも短期的には、JB買収が営業減益要因になる可能性が高い」と指摘、鳥井社長の認識には懐疑的な面持ちだ。

 JBの買収は高かったのか、安かったのか。結論が出るまで時間がかかりそうだ。
(文=福井晋/フリーライター)

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