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今枝昌宏「ビジネスモデル考」

日本の連合艦隊、なぜ戦力の大きい露バルチック艦隊を撃破?ビジネスモデルの本質とは

文=今枝昌宏/エミネンスLLC代表パートナー
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日本の連合艦隊、なぜ戦力の大きい露バルチック艦隊を撃破?ビジネスモデルの本質とはの画像1「Thinkstock」より

「『ビジネスモデル』という言葉が、『戦略』とどのように違うのか、よくわからない」という声をよく耳にする。ビジネスモデルは「仕組み」という言い方もされるが、「じゃあ、『仕組み』とは何なのかを教えてほしい」とも言われる。「ビジネスモデル」という言葉には、明確な定義はないが、今回は読者の腹に落ちるようなかたちで、私なりにこの疑問に答えてみたい。

伝統的な戦略論とは、どういったものか?

 ビジネスモデルを論じる前に、まず戦略について知っておこう。

 そもそも、戦略とはなんだろうか? 「戦略」を表す英語は「strategy」だが、そこに本来「戦(いくさ)」という意味はない。strategyとは「方策」のことで、戦略とは「ある目的ないし目標を達成するための手段、あるいは方法」と考えればいい。これは、軍事においてもビジネスにおいても共通である。

 では、ビジネスにおける戦略とはなんだろうか。特にコーポレート戦略や生産、営業などの機能戦略と対比した時の事業戦略においては、売り上げや利益を達成するための方策として、伝統的に「市場におけるポジションの選択」が戦略の内容になると考えられてきた。

 市場におけるポジションとは、言い換えれば「どの市場で戦うか」あるいは「市場のどこで戦うか」ということだ。例えば「女性市場で戦う」「高級品市場で戦う」というふうに、市場を選択するのである。

 市場を構成している二大要素は、顧客と提供価値(売り物)であり、市場はそのどちらからでも定義することができる。例えば、高級品市場は売り物、女性市場は顧客の側から市場を定義した例だ。

「こんな製品を出そう」「こんな顧客を狙おう」という会話は、実は市場のポジションについて語っている。戦略とは「『誰に』『何を』売るかだ」、という言い方もされるが、顧客と売り物は市場の二大構成要素なので、それはすなわち市場を選択することを意味しているのである。

 アメリカの経営学者のマイケル・ポーターが提唱する「5つの力モデル」というフレームワークがある。5つというのは、「業界内の競合企業」「新規参入の脅威」「代替品の脅威」「売り手の交渉力」「買い手の交渉力」のことであり、これは市場の魅力度を測る道具であって、ポーターが「戦略は市場の選択の問題だ」と考えていることを端的に示している。

 ポーター以後、「ポジションは5つの力のような、市場が備える客観的な特徴のみならず、自社の強みや弱みを考慮して選択しなければならない」という、いわゆる自社のケイパビリティの議論がされている。しかし、戦略の内容が基本的に市場の選択であるという考え方には、変わりはないのである。

今枝昌宏

今枝昌宏

エミネンスLLC代表パートナー。京都大学大学院法学研究科、エモリー大学ビジネススクールMBA課程卒業。ジャパンエナジー(現JX)、PwCなどのコンサルティングファーム、買収ファンドであるRHJI(旧リップルウッド)などでの勤務経験を持つ。著書に『ビジネスモデルの教科書』『サービスの経営学』など、訳書に『戦略立案ハンドブック』(いずれも東洋経済新報社)がある。ご連絡は、imaeda@eminent-partners.com まで。

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