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今枝昌宏「ビジネスモデル考」

日本の連合艦隊、なぜ戦力の大きい露バルチック艦隊を撃破?ビジネスモデルの本質とは

文=今枝昌宏/エミネンスLLC代表パートナー
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ビジネスモデルとは何か?

 では、ビジネスモデルとはなんなのだろうか?

 簡単にいえば、ビジネスモデルというのは市場ポジション内部における戦い方なのだ。しかし、ポジショニングとは一応関係がない戦い方であるため、業界や市場を越えて類型化することが可能なものでもある。

 ビジネスモデルは「儲けの仕組み」という言い方をされることがあるが、この「仕組み」という表現は、繰り返し行われる様子、つまり再現性が備わっていることを表現している、と考えることができる。

 私は、ビジネスモデルの本質は2つあると考えている。ひとつは構造であり、そのビジネスがどのような要素から成り立っているか、その要素同士がどのような関係にあるか、ということである。チャネルの構造やコスト構造、価格構造なども包含する。

 もうひとつはプロセスや因果であり、要素間にどういうダイナミズムが働き、物事が流れていくかということである。何度も同じプロセスでビジネスを獲得し、利益を生み出す様子こそが、「仕組み」という言葉にぴったりではないだろうか。

 軍事にたとえれば、ポジションというのは戦場の選択の問題だが、ビジネスモデルは、その戦場でどのように戦うかという戦い方の問題なのである。日本海海戦で帝国海軍が使ったといわれる「丁字戦法」がそれに近い。

 丁字戦法とは、敵艦隊の前面に進行を遮るような形で展開し、敵の先頭艦から順次集中砲火を浴びせることで敵艦隊全体を撃滅する戦術だ。自軍の持てる力を敵の一部に集中して順次撃破するため、自軍よりも大きな敵を倒すことができるのである。このような再現性のあるプロセスを、ビジネスではビジネスモデルと称しているのである。

 ビジネスモデルの例は、拙著『ビジネスモデルの教科書』(東洋経済新報社)に豊富だ。例えば「顧客ライフサイクルマネジメント」は、顧客を若いうちに捕捉し、顧客の年齢的な成熟とともに順次提案を変化させて、取引を継続するプロセスだ。「プラットフォーム」は、顧客を増加させて自社サービスの一部とすると、他の顧客にとってサービスの価値が増加し、さらに顧客を増加させることができる、というダイナミズムである。

 ビジネスモデルは、市場ポジション内部の問題だが、やはり戦い方の問題であり、事業の競争力や収益とダイレクトに結びついており、オペレーションの問題とは言いがたい。読者の中には、「戦略の直下にオペレーションがある」という階層イメージを持っている人も多いと思うが、実は、従来戦略と考えられてきたポジショニングとオペレーションの間に、ビジネスモデルという階層が存在しているのだ。

 ストーリーとしての戦略論が人気だが、この背景には「ポジショニングだけではなく、戦略にダイナミズムを考慮すべき」という主張が含まれているだろう。また、「戦略シナリオ」などという言い方は、戦略にダイナミズムが含まれていることを感覚的に表現したものだと理解できる。

今枝昌宏

今枝昌宏

エミネンスLLC代表パートナー。京都大学大学院法学研究科、エモリー大学ビジネススクールMBA課程卒業。ジャパンエナジー(現JX)、PwCなどのコンサルティングファーム、買収ファンドであるRHJI(旧リップルウッド)などでの勤務経験を持つ。著書に『ビジネスモデルの教科書』『サービスの経営学』など、訳書に『戦略立案ハンドブック』(いずれも東洋経済新報社)がある。ご連絡は、imaeda@eminent-partners.com まで。

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