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激減、9割が赤字…瀕死の地方路線バス あなたならどう再建?ネットを使わず考察

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『ローカル路線バス乗り継ぎの旅』(テレビ東京)のHPより
 テレビ東京系列で年2回ほどのペースで放映されている人気番組に『ローカル路線バス乗り継ぎの旅』がある。タレントの太川陽介さんと漫画家の蛭子能収さん、それに毎回代わる女性ゲストを加えた3人が指定された地点から出発し、路線バスだけを乗り継いで3泊4日という期限内に目的地へ到達するという番組だ。この番組を観ていていつも感心することは、出発点とゴール設定の絶妙さだ。スタッフは経路設定に当たって、相当の事前調査とシミュレーションを行っていることであろう。

 さて、実際に旅をする太川さんたちだが、インターネットを使うことは禁止されている。得られる情報は極めて限定的だ。紙の地図帳だけを頼りに経路を決めなければならない。バスの車内で乗客や運転手に情報を求め、終点では地元の人や駅の案内所で情報を収集する。到着してバス路線がないことを知って愕然としたりする。どのルートを選ぶかが、その後の旅を苦しくも楽しくもする。限られた情報の中で意思決定しなければならないのは、まさにビジネスと同じだ。

 ネットと違って、紙の地図帳にある情報は必ずしも最新とは限らない。現場に着いてみると、地図にあるはずの路線がなくなっていたりする。元の地点に戻るか、意を決して県境を歩いて越えるか、決断を迫られる。このハラハラどきどき感が人気の秘密なのであろう。

 2007年から15年1月放映までの成功回数は19回中14回だ。県境で路線バスがなかったり、あっても本数が極端に少なかったりすることを考えると、この成功率はかなり高いといってよいだろう。番組としても7割程度の成功率が狙いどころなのかもしれない。ちなみに15年1月の放送では、大阪城から金沢兼六園(このあたりは、北陸新幹線開業をも想定している)を目指したが見事に成功していた。

悪循環

 さて、この番組を観ていて気がつくことは、「路線バスが昔はあったのだけれど……」という地元の人たちの声の多さだ。その声が示唆するように、日本の路線バス業界の事情は深刻だ。昭和40年代、バスの利用者数は年間101億人にも上ったが、その後、自動車の普及とともに利用者数が減少し、今ではピーク時のわずか4割となっている。将来を考えても明るい見通しはない。団塊世代が定年を迎えるので通勤客は減少する。その一方、少子化で通学客も減る。減少傾向に歯止めがかからない。

 現在でも路線バス事業者の7割は赤字といわれており、地方に限れば9割近くが赤字と、さらにその比率は高くなる。毎年、2000kmもの路線が廃止されているという報告もあり、路線バス事業の将来は極めて深刻だ。『ローカル路線バス乗り継ぎの旅』は、まさにそうした路線バス事業、特に地方の路線バス事業の苦境を垣間見せてくれる。