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田中洋「マーケティングのキーインサイト」

広報の終わり?企業はなぜ「メディア化」するのか?スタバ、マック、コカ・コーラ…

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「ブランドジャーナリズム」という概念が、ごく近年“再”浮上してきました。米国のGEやアメリカン・エキスプレス、コカ・コーラ、日立製作所、リクルートなどの企業がすでに開始しているこのブランドジャーナリズムとは、どのようなものでしょうか。また、2000年代から唱えられていたこの概念がなぜ再浮上したのでしょうか?

 ブランドジャーナリズムと同じような意味を持った別の言葉はいくつかあります。例えば、ブランデッドジャーナリズム、コーポレートジャーナリズム、ブランドパブリッシングなどです。またコンテンツマーケティングとも類似した概念です。こうした概念は、マーケティング戦略において、どのように位置づけられるのでしょうか。

ブランドジャーナリズムの誕生

 まず、歴史をさかのぼってみたいと思います。「“再”浮上」と書いたのは、この言葉が必ずしも新しいものではないからです。

 ブランドジャーナリズムという言葉を最初に考えたのは、02年から05年までマクドナルドのチーフ・グローバル・マーケティングオフィサーを務めたラリー・ライト氏です(Solomon, 2004)。ライト氏は、世界的なブランドコンサルタントとして知られており、2000年前後には日産自動車のブランドプロジェクトにも参加していました。
 
 ライト氏が00年代の当時、マクドナルドでブランドジャーナリズムを唱えた背景には、同社がファミリーからビジネスパーソン、アメリカ・欧州・アジア・アフリカに至るさまざまなターゲット顧客層を抱えている事情がありました。それらの人々にひとつのメッセージを発信するだけでは十分ではないと考えたのです。

 これは現在でいう、「マルチファセット・マーケティング」(多様な顧客と多様な接点を持つコミュニケーション戦略)にも似た考え方です。つまり、ブランドジャーナリズムはもともと、異なったターゲットグループに異なったメッセージを発信することを意味していました。

 米アド・エージ誌は09年に、このブランドジャーナリズムという言葉を00年代の10のマーケティング・キーワードのひとつに選び、「おそらく現在のマーケティングの状況を最もよく言い表している言葉だろう」と評価しています。

 ただし、当時このライト氏の考え方は反発を呼びました。ローラ・ライズ氏(戦略コンサルタント、「ポジショニング」で知られるアル・ライズ氏の娘)やセス・ゴーディン氏(パーミッションマーケティングで知られるコンサルタント)などから批判されています。それまで、マーケティング・コミュニケーションの世界では、IMC(Integrated Marketing Communications:統合型マーケティング・コミュニケーション)に象徴されるように、メッセージはワンボイス=ひとつのメッセージで統合すべきと考える論者が多かったからです。