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大崎孝徳「なにが正しいのやら?」

大手居酒屋チェーンがヒドすぎる!料理遅い&冷たい、怒り覚える店員…組織巨大化の代償

文=大崎孝徳/名城大学経営学部教授

 また、大手居酒屋チェーンBでは、筆者が訪れた時は店内が空いていたにもかかわらず、注文したものが運ばれてくるまでが非常に遅く、しかも焼き鳥などもすべて冷め切った状態でした。すべての料理を運んできた店員の胸には大きな若葉マークが張り付いており、注文間違いなど多少のことがあっても許してあげたいところですが、熱々で提供されるべき料理が完全に冷え切った状態で出され、しかもそれを悪いと感じていないのです。このような失態となると、「そんなマークで、すべて許されるわけではない」と逆に怒りが湧いてきます。

 目の前にいる若葉マークの彼に対する怒りも多少はあるものの、彼を管理すべき店長および会社に対しての怒りのほうが断然大きくあります。これはその時たまたまで、普段は熱々の料理が提供されているかもしれません。しかし、若葉マークがついている以上、店長など経験あるスタッフが管理する責任があり、組織的体制に問題があると主張したくなります。

 では、なぜこんな状況になってしまったのでしょうか。

 もしかしたら、人材不足で忙しく、客のことを気にかけていられないのかもしれません。または売り上げ至上主義の企業で、売れればそれでいいというスタンスなのかもしれません。店員にしてみれば、顧客サービスを徹底してリピーターを増やしても評価されないという不満があるかもしれません。会社が大きくなるにつれ、福利厚生やその他の管理費用が増大するなど高コスト体質に変化し、手間がかかる、原価率が高いといったメニューに注力できないのかもしれません。仮に経営者が顧客満足を大切にしているとしても、大きな組織ではその意識が末端にまで行き渡っていないのかもしれません。そもそも、大きなチェーンに成長するまでには通常、長い時間を必要とするため、組織の緩みや歪みが深刻化しているのかもしれません。

 もともとチェーンオペレーションの肝は規模の経済の実現ですから、そのために徹底した標準化に基づく合理化が重要なポイントとなります。こうした特徴は、物販以上に顧客サービスがより重要視される飲食業界においては、大きな負の影響をもたらすということでしょう。また、組織が大きくなりすぎるということも深刻な問題です。

 例えば、同じようにチェーン展開している居酒屋でも、名古屋地域に特化しているなど小規模な場合は、メニューや接客が充実しているように感じる場合が少なくありません。おそらく、経営者の「客においしいものを元気いっぱい届けるぞ」といった熱い思いが、店長やスタッフにまでしっかり浸透しているのでしょう。

 最近筆者が通っている個人経営の居酒屋では、枝豆を頼んだ際に「今の時季は冷凍になるけどいい?」といった一声をかけてくれます。こんな一言が非常に心にしみる、今日この頃です。
(文=大崎孝徳/名城大学経営学部教授)

大﨑孝徳/香川大学大学院地域マネジメント研究科(ビジネススクール)教授

大﨑孝徳/香川大学大学院地域マネジメント研究科(ビジネススクール)教授

香川大学大学院地域マネジメント研究科(ビジネススクール)教授。1968年、大阪市生まれ。民間企業等勤務後、長崎総合科学大学・助教授、名城大学・教授、神奈川大学・教授、ワシントン大学・客員研究員、デラサール大学・特任教授などを経て現職。九州大学大学院経済学府博士後期課程修了、博士(経済学)。著書に、『プレミアムの法則』『「高く売る」戦略』(以上、同文舘出版)、『ITマーケティング戦略』『日本の携帯電話端末と国際市場』(以上、創成社)、『「高く売る」ためのマーケティングの教科書』『すごい差別化戦略』(以上、日本実業出版社)などがある。

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