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山崎元「耳の痛い話」

りそなの残業なし社員制導入、むしろ「残業あり社員」を例外にしては?残業の甚大な弊害

文=山崎元/楽天証券経済研究所客員研究員、マイベンチマーク代表
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りそなの残業なし社員制導入、むしろ「残業あり社員」を例外にしては?残業の甚大な弊害の画像1りそな銀行本店(「Wikipedia」より/Jo.)

 公的資金完済のメドがついた、りそなホールディングス(HD)が、少々風変わりな人事制度を今年の10月から導入する。導入される新制度は「スマート社員」と呼ばれ、2種類ある。

 一つは、業務範囲を限定した正社員制度で、自分に合った業務を長く続けたい行員のために設けるという。主に中途採用社員やパート社員から転換して正社員に採用するケースを想定しているようだ。

 もう一つは残業のない正社員だ。今回は、主にこちらに注目したい。この職種の社員には、原則として時間外勤務をさせないのだという。制度上は管理職への昇進も可能で、業務範囲を限定せず、広報などの本部の業務にも就けるという。主に、従来の正社員からの転換を想定しているようだ。

 スマート社員はいずれも通常の正社員と同じ等級制度で評価し、基本給も同じ水準だが、賞与は7割程度に減額されるという。このネーミングだと、正社員はスマートでない社員ということになり、スマートでないほうの年収が高くなるというのは釈然としないが、「泥臭く働くほうが、お金にもなるし、(たぶん)出世もするのだ」という教訓を与えてくれているようにもみえる。

 さて、残業なし社員は、育児や親の介護などのために定時退勤する必要がある社員にとっては、安心で便利な職種だろう。その一方、通常の正社員にもさまざまな事情があるはずだが、定時に帰りにくい雰囲気が職場にあるということを、この新制度は図らずも表しているように思う。

 そもそも、大多数の社員が定時に帰ることができない業務と組織の設計自体に、問題があるのではないか。りそなHDに限らず、業務の繁閑の変動を、「残業」を前提として社員の業務時間の長短で吸収するという業務設計は、いささか社員の無理に頼りすぎている。業務分担を考え直したり労働時間を延長するよりも、社員の能率を上げる工夫がないかより徹底して検討したり、フレックス・タイムを上手に利用させたり、もっと工夫の余地がある。

個々の社員に最適なマネジメント

 また、個々の部署や職場のマネジャーの力量に大いに依存することになるが、通常の正社員制度を運用しつつも個々の社員の事情に応じたマネジメントを行うことで、ある社員に対してあらかじめ定めた時期には残業がない勤務を可能にするといった対応ができないものか。正社員はいつでも半自動的に残業させることができるという状況を前提に、せいぜい残業代の抑制をモチベーションに部下の管理をさせるのは、中間管理職マネジメント層を甘やかしすぎのような気がする。

山崎元/楽天証券経済研究所客員研究員、マイベンチマーク代表

山崎元/楽天証券経済研究所客員研究員、マイベンチマーク代表

経済評論家。楽天証券経済研究所客員研究員。(株)マイベンチマーク代表取締役。1958年北海道生。1981年東京大学経済学部卒業、三菱商事に入社後金融関係の会社に12回の転職を経て現職。資産運用を中心に経済一般に広く発言。将棋、囲碁、競馬、シングルモルト・ウィスキーなどに興味
評論家・山崎元の「王様の耳はロバの耳!」

Twitter:@yamagen_jp

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