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本業が稼げない…“非鉄道会社化”する鉄道会社?家事代行、健康相談等で生き残り模索

文=小川裕夫/フリーランスライター
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 従来、鉄道会社は私企業であるために、営利目的の事業をメインに手がけてきた。プロ野球球団の経営のように、事業単体では利益を出しにくいものもあるが、プロ野球の場合は球場に足を運ぶファンが鉄道を利用するため、大きな相乗効果を上げていた。

 営利を追求しない、公共性の強い事業を手がける鉄道会社が増えてきた昨今、京王の新戦略がにわかに注目を浴びつつある。

 京王は、高度経済成長期に沿線に多摩ニュータウンが造成され、沿線人口が増加した。多摩ニュータウンだけで最盛期に約10万人が居住し、そこから多くの人が京王の電車に乗って都心部に通勤した。

 前述したように、近年は団塊の世代が続々と定年退職し、旅客人員は激減している。電車の利用客が減少すれば、運転本数は減ってしまう。そうなると利便性が低下し、新たに京王沿線に住む若年層が少なくなる。人口が減少すれば商店などが撤退し、街は衰退する。

 現状から考えれば、多摩ニュータウンの未来は決して明るいものではない。多摩市の試算によると、50年の多摩ニュータウンの人口は8万人まで減少するという。減少するのは2万人程度とそれほど多くはないが、深刻なのは40%超とされる高齢化率だろう。

 そうした危機を察知した京王は、05年に多摩ニュータウンの再生を検討するプロジェクトチームを社内で発足させた。

 京王は、07年に「京王ほっとネットワーク」事業をスタートしている。同事業は、高齢者の生活サポートが目的で、系列の京王ストアで製造・販売している弁当を自宅まで配達するサービスがメインだ。同年には、浴室やキッチンのリニューアルや外壁塗装といったリフォーム業を手がける「住まいのサポートサービス」も開始した。

 京王ほっとネットワーク事業は、08年に家事代行サービス、09年に買い物代行サービス、10年にはホームセキュリティサービス、と年を追うごとに拡大している。

 業務内容が拡大するだけではなく、京王は沿線をベースにサービスエリアも広げている。こうした実績をもとに、12年に新部署の沿線価値創造部を設立した。同部が手がける事業は、従来の鉄道会社が進めてきた非鉄道事業とは一線を画す。

「沿線価値創造部を発足させた理由は、『住んでもらえる、選んでもらえる沿線』の具現化です。具体的には、若い世代に住んでもらえるように、子育てしやすい環境を整えて人口の流入を目指しています。他方で、シニア層には生活の利便性を確保し、安心して暮らせる沿線づくりを進めています」(京王広報部)

 京王は東京都、多摩市、都市再生機構(UR)などがメンバーになっている多摩ニュータウンの再生検討会議に、地元の鉄道会社という立場で積極的に参加している。

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