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小黒一正教授の「半歩先を読む経済教室」

政府、「厳しい歳出抑制」のまやかし 「3年で増加額1.6兆円」のウソ、実は2倍?

文=小黒一正/法政大学経済学部教授
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 いろいろわかりにくい表現や言葉が並んでいるが、文章Aや文章Bに登場する「実質的な増加」の具体的な意味や、文章Bの「社会保障関係費の伸びを、高齢化による増加分と消費税率引上げとあわせ行う充実等に相当する水準におさめる」という意味が重要となる。

「実質的な増加」とは、社会保障関係費の伸びのうち「高齢化による増加分」をいい、上記の文章は、15年度から18年度までの社会保障関係費の「実質的な増加」(=高齢化による増加分)を1.5兆円程度にとどめることで、18年度までの国の一般歳出の「実質的な増加」(=高齢化による増加分)を1.6兆円程度に抑制する方針を意味する。

 だが、文章Bの「社会保障関係費の伸びを、高齢化による増加分と消費税率引上げとあわせ行う充実等に相当する水準におさめる」という表現は、1.6兆円程度の伸びの枠外で、17年4月に消費税率が10%に引き上げられると、それを財源とする「社会保障の充実」(1.5兆円程度)の増加は許容するといっているのだ。

3年間の増加は3兆円

 つまり、国の一般歳出の伸びは、実質的な増加1.6兆円程度(うち社会保障関係費1.5兆円程度)のほか、消費税率を10%に引き上げることができれば、「社会保障の充実」(1.5兆円程度)が追加されるので、骨太方針は、一般歳出の増加を15年度から18年度までの3年間で3.1兆円程度(=1.6兆円+1.5兆円)許容することを意味する。

 その結果、社会保障関係費の15年度から18年度までの増加は3兆円(=1.5兆円+1.5兆円)、年平均で約1兆円増を許容する内容となっており、むしろ緩い歳出抑制となっている。社会保障改革を加速することで、もう一段階踏み込んだ社会保障費の抑制が望まれる。
(文=小黒一正/法政大学経済学部教授)

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