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雨宮寛二「新・IT革命」

高品質で価格はわずか5分の1…なぜ中国ベンチャーが、あっさりアップル&サムスン超え?

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アップルのiPhone
 新興国のスマートフォン(スマホ)市場で異変が起こっている。スマホは新興国でも急速に普及し、機能性や信頼性、利便性がもはや市場のニーズを上回り、顧客の選択基準はすでに価格へと移行しつつある。そのため、どの新興国でもローエンドモデルが市場を席巻し、コモディティー化(商品差別化の消失)の進行が顕著になってきた。

 ローエンドモデルは地場メーカーの台頭に象徴される。例えば、フィリピンではすでにチェリーモバイルといった地場メーカーがスマホの出荷シェアで首位に立ち、3位に位置するマイフォンも2位のサムスンを射程に捉えている。一方、インドネシアやインドでは地場メーカーのスマートフレン、マイクロマックスやインテックスが、それぞれ首位のサムスンを猛追している。

『アップル、アマゾン、グーグルのイノベーション戦略』(雨宮寛二/エヌティティ出版)
 これらの地場メーカーは、100ドル(約1万2000円)前後の端末価格でローエンドから市場に参入してきた。例えばフィリピンでは、市場に出荷されるスマホ端末のうち、58%以上が90ドル以下のスマホである。こうしたローエンド傾向は今後も続き、将来的には50ドル以下のスマホが多数登場し、フィリピンの市場を席巻すると予測する調査会社もある。実際インドでは、すでに30ドル台のスマホが地場メーカーから登場している。

シャオミの台頭


 これらの主要新興国に対し、中国のスマホ市場は多少状況が異なる。中国では、地場メーカーであるシャオミやファーウェイがローエンドモデルとしてすでにサムスンの牙城を崩し、スマホの出荷シェアで上位に位置しているが、その首位の座に君臨しているのはハイエンドモデルのアップルである(2015年第1四半期)。中国では、購買欲旺盛な中間層と富裕層が二極化しているという事情が、その背景にある。

 シャオミは今年に入って出荷シェア首位の座をアップルに譲ったが、14年の年間シェアではサムスンを抑えて、首位の座をその手中に収めている。それではなぜ、シャオミのようなローエンドモデルのスタートアップ(新興企業)が、資本力に勝るアップルやサムスンを抜くことができたのか。

 シャオミはスマホの設計を自社で行い、部材は最新技術を有する選りすぐりのサプライヤーから調達して、高い品質のスマホを開発している。この手法は、アップルのビジネスモデルを踏襲するものであるが、徹底的なコストダウンを図ることで、価格をiPhoneの5分の1程度に設定することに成功している。

 そのうえ、販売面ではリアルの店舗を持たず、インターネット販売に特化することで、販売コストを最小限に抑えている。こうした独自の競争戦略を展開することで、シャオミは創業からわずか5年で売上高1兆円を達成し、中国スマホ市場でアップルやサムスンといった巨人に肩を並べるまでになった。

 今後、主要新興国のスマホ市場では、こうしたローエンド傾向がますます顕著になり「集中」が進むであろう。それに伴い寡占化が進み、企業力はあっても競争力の弱い企業は淘汰されていくに違いない。すでに成熟化しつつあるスマホ市場で、アップルやサムスン以外の企業が市場のマージンを持続的に享受するのは、ますます難しくなるであろう。
(文=雨宮寛二/世界平和研究所主任研究員)