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高井尚之が読み解く“人気商品”の舞台裏

トマム破綻、どう奇跡の再建?星野リゾートの驚異の手法 高い集客力を生むスゴい仕掛け

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 その再生キーワードを2つ示すと、「地域特性の掘り起こし」と「従業員のアイデアを尊重」である。

 例えば、青森県三沢市の「青森屋」では、「のれそれ青森」(のれそれは津軽弁で「もっともっと」の意味)を掲げた。食事はバイキング形式で、かっちゃ(おかあさん)に扮したスタッフが「よぐ来たねぇ」などと津軽弁で出迎える。別の食事処では、ずっぱ御膳(せいろ蒸し料理)を味わい、宿泊客が青森ねぶた弘前ねぷたなど、青森四大祭りを踊ることができる。

 こうしたアイデアを従業員に考えてもらうのが星野流だ。自分の提案内容が採用されれば、当事者意識も高まるだろう。かつて青森屋の総支配人は「会議での意見も活発で、『のれそれ感が足りない』という声が出るようになった」と話していたが、最近の宿泊プランでは、より地元らしさが高まっている。

 東京のホテルに匹敵するクールなサービスではなく、地元色あふれるサービスで家族客や友人同士など新たな顧客を獲得。赤字だった施設を黒字に変え、人気施設としたのだ。

雲海の様子

冬以外の魅力「雲海」を訴求して客を呼び戻す

 時期的には青森屋と前後するが、トマムの集客策も基本は変わらない。もともと破綻した原因は、客室が1000室を超え、最大2500人が泊まれる巨大施設でありながら、冬場のスキー客に頼ったビジネスモデルで、冬と夏の集客差が激しかったためだ。赤字が膨らみ、設備投資をしようにも資金不足で施設は老朽化するという悪循環だった。

 そこで従業員が集客アイデアを出し合う中で出たのが「雲海」だ。雲海とは文字通り、山や航空機など高い場所から見下ろした時に、雲が海のように見える光景である。

 05年にこれを提案したのは、スキー場のリフトやゴンドラの運営・保守管理をする索道部門の責任者だった伊藤修氏だ。ゴンドラ山頂付近で作業をしていて、ふと気づくと雲海が出ていた。「この景色を、お客様にも見てもらいたい」というのが提案理由だった。

 その提案を受けて試験的に雲海を見てもらうサービスを始め、翌06年から本格運用させた。現在は毎年5月半ばから観賞用施設「雲海テラス」の営業がスタートし、期間中に観光客は早朝にゴンドラでテラスへ登り、雲海との遭遇を目指す。

 14年10月12日、累計で雲海見学客が50万人を突破した。初夏から秋にかけての目玉企画だが、06年度は1万人、翌年は1万7000人にすぎなかった。それをテラスの拡張や、カフェを併設するなどサービスの充実を図り、認知度を高め、14年度には約12万人が訪れた。

 ただし雲海が見える確率は高くなく、シーズン中でも3~4割だ。そこで同社では毎日「雲海予報」も出している。ちなみに筆者の宿泊した翌朝の予想は30%だったが、翌朝5時集合のため早起きしてロビーに行くと、悪天候でゴンドラ運行が中止となっていた。
 
 同社では雲海を見られなかった客の不満を緩和するため、ゴンドラ乗車券を絵ハガキにして、テラス内のポストに投函すると無料で全国に配達するサービスを導入した。山頂テラスでは無料ヨガ教室を実施するなど、雲海以外の思い出づくりにも注力している。