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高井尚之が読み解く“人気商品”の舞台裏

トマム破綻、どう奇跡の再建?星野リゾートの驚異の手法 高い集客力を生むスゴい仕掛け

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李根株氏

インバウンド女性が責任者を務める、教会ブライダル

 トマムのもう1つのウリが、リゾート内にある「水の教会」での結婚式だ。このブライダル予約ユニットのディレクターを27歳の若さで務めるのが韓国人の李根株(イ・グンジュ)氏だ。韓国の大学で日本語を学び、外資系企業への就職活動中に星野リゾートの存在を知って応募、10年に採用されてサービスチームに配属となった。その後、ブライダルユニットに異動、ブライダル部門のディレクターに立候補した。

 トマムにはインバウンド(訪日外国人)の通期スタッフも28人いるが、中でも李氏は努力家だ。「フロントで使う敬語は『~です』が中心ですが、ブライダルで使う敬語は『~でございます』が多いなど、日本語の微妙な使い分けに悩みながら習得しました」と語る。

 このように、来日後の猛勉強で独特の日本語表現を学んだ。かつては「日本人の使う日本語は全部正しいと信じていて、『ご主人さま』と呼ばずに、奥さまから紹介されたとおりに『旦那さん』と呼んでしまったこともあります」(李氏)

 李氏が担う結婚式は、しきたりや着物の扱いなど日本文化を熟知していないと務まらない部署だ。挙式者の大半は日本人で、外国人が担当ということに不安を覚えた父親から「担当を替えてほしい」と言われ、交代させられたこともある。その後、同じ話が持ち上がった時は、自筆の手紙で「私はこんなに日本語もでき、日本のことを勉強しています」と伝えて担当を続けたそうだ。そうした努力も手伝い、顧客満足調査では常にポイントが高い人気のプランナーだ。

 同社のもう1つの特徴は、従業員がさまざまなサービスを行う「マルチタスク」という制度だ。小規模の施設ではレストランのスタッフがベッドメイキングを行うこともある。そして現場を知った人間がスタッフ部門にも異動する。冒頭で紹介した広報の橋本氏は、異動前の部署ではアクティビティ開発を担い、ネイチャーガイドも務めていた。

 今回の滞在時には、インバウンドの宿泊客も多く見かけた。日本人がハワイなどで海外挙式をする際に日本人スタッフが安心感を与えるように、近い将来、李氏のような外国人スタッフが、同国人のアテンドをするのが当たり前になるかもしれない。
(文=高井尚之/経済ジャーナリスト・経営コンサルタント)

高井 尚之(たかい・なおゆき/経済ジャーナリスト・経営コンサルタント)
1962年生まれ。(株)日本実業出版社の編集者、花王(株)情報作成部・企画ライターを経て2004年から現職。出版社とメーカーでの組織人経験を生かし、大企業・中小企業の経営者や幹部の取材をし続ける。足で稼いだ企業事例の分析は、講演・セミナーでも好評を博す。近著に昨年10月に発売された『カフェと日本人』(講談社現代新書)がある。これ以外に『「解」は己の中にあり』(講談社)、『セシルマクビー 感性の方程式』(日本実業出版社)など、著書多数。
E-Mail:takai.n.k2@gmail.com