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高橋篤史「経済禁忌録」

東芝“不正”会計、「チャレンジ・上意下達体質」批判は的外れ?損益計算書偏重経営の弊害

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東芝の事業所(「Wikipedia」より/Waka77)
 本連載前回記事『東芝“不正”会計、「組織的関与・利益かさ上げ」批判は正しい?過去の粉飾決算との比較論』では、東芝の会計をめぐる問題について、「粉飾決算」「不正会計」「不適切会計」など、どう呼ぶのが妥当なのか、過去の事例を参照しつつ「規模」「手口」の観点から考察した。今回は、トップ以下の組織的関与、そしてこの問題の本質について考えていきたい。

 まず、組織的関与については、第三者委員会による調査報告書が指摘するように、ある程度組織を挙げて行っていたことは間違いない。むしろ末端の社員だけでできるようなことではない。ただし、それほど組織的悪意があったとも思われないのも確かだ。特に世間の関心が高い歴代トップの関与については、そう思えてならない。例えば、関与が最も深かったとされる部品取引は通常の商流から逸脱したものではないし、実態がなかったわけでもない。だから、田中久雄前社長があくまで通常取引の範疇と考えていたとしても、それほど不思議ではない。

 かさ上げ利益を「借金」と呼んでいたことが注目されているが、前述したように利益は一時的なものにすぎないから、その後、完成品の販売を実現することで解消する必要がある。単にそれを「借金」と表現していただけかもしれない。逆にいえば、よほど会計実務に精通していない限り、「バイ‐セル取引」においてどんな会計処理なら適切といえるのか判断することは難しいはずで、それは必ずしも経営トップが備えていなければならない知識というわけでもない。

 オリンパスの場合、社長はじめ秘密を共有するメンバーだけが集まる定期的な会議があり、簿外損失の管理状況を話し合っていた。また、メディア・リンクスやアイ・エックス・アイでは社長自らがエクセルファイルなどを使って協力先企業が数十社にも上る架空循環取引の全体をコントロールしていた。しかし、東芝ではそうした場面はない。トップが個別に事業部門にハッパをかけるやりとりはいくつか明らかにされているが、システマティックに会計操作の企みが進行していたという決定的場面はない。部門責任者が苦し紛れに行っていた側面のほうが強く感じられる。

 東芝は今回、かさ上げ利差の訂正にともない固定資産の減損処理が繰延税金資産の取り崩しを迫られる公算が大きい。その額は数千億円規模に上るものと見られる。極めて大きな影響だ。調査報告書を読む限り、それを避けるために多部門で利差かさ上げを行っていたということでもなさそうだ。

 以上のことからすると、東芝問題の落としどころとして妥当なのは、課徴金処分ということになるのではないか。よって表現を当てはめるとすれば「不正会計」というのが筆者の見立てである。ただし、現時点で判明していることを基にした評価であると留保しておきたい。この先、証券取引等監視委員会の調査などで構図を一変させるような新たな事実が判明する可能性も、ないわけではない。